大劇場の新公と東宝の新公
2014年9月26日 宝塚友人から東宝の「The Lost Glory」の新人公演のチケットを思いがけず譲っていただきました。もちろんいつもどおり行く予定はなかったのですが、チケットが手元にある、となると遠征をしたっていいじゃない?という気持ちがむくむくと。
それはやはり、大劇場で観た琴ちゃん(礼真琴)のイヴァーノがものすごく気に入ったから。パワー全開の悪役。楽しかったからもう1回観たい!「Who knows?」聞きたい!
それと、今後ここまで色濃い悪役を演じる琴ちゃんを観ることはないかもしれない、と思ったから。もともとイヴァーノは特殊で、トップさんがやっていて出番が多い(人物が描かれてるとは言わない)悪役。琴ちゃんの持ち味とも遠いと思われているので、間もなく新公を卒業する琴ちゃんが今後本役でこのような役に当たることはなかなか難しいかも、と思ったのです。れおんくん(柚希礼音)ですらマトモな悪役はイヴァーノとショーヴラン位で、そもそも数が少ないものだと思うし。
などと自分に言い訳しながら着々と行く算段を整えました。
もう一つ、以前から気になっていたことがありました。東宝の新人公演のレポを読んでいると、何かテンションが違うのです。どの組もそうなのですが、感想が大人しい。よかった、まとまってた、とかそういう感想が多い。
琴ちゃんファンになって自分が大劇場で観るようになると特に、東宝での感想が自分がムラで観た時の感想と何か違う。同じものを観ているはずなのに?なんでなんだろう?ムラだとハチャメチャだったり突き抜けたり、良くても悪くても感想が飛び跳ねてるのです。琴ちゃんが東宝行くと小さくまとまっちゃうのか?いや、他の組の新公の感想も同じような傾向だし、とずっと引っかかるものを感じていました。
今回やっとわかりました。
観ているものが違ってました。そりゃ、東宝の新公の感想はこういうふうになるわ!と合点がいきました。
東宝はムラの新公を踏まえて、生徒さんそれぞれが課題を修正する。そして全体がひとつにまとまるよう整えていってるんですね。だから良くも悪くもムラの新公より“大人しい”ものになってしまうんだ。せっかくとんがってたところが丸くなってしまうんだ。まだ荒削りな新人さんたちが演じる公演だからそれがより顕著なのでしょう。
特に今回は東宝新公の開催日が遅くて、じっくり練り直す時間があったのでしょうね。琴ちゃんに関していえば、大劇場と東宝、2パターンの新公を観たような気持ちになりました。
★
琴ちゃんはものすごくていねいに役作りをしてました。ひとつひとつの芝居の動作や声の調子、表情を計算し、作りこんでいました。一瞬も気を抜いてなかったんじゃないか。ムラ同様かなり表情豊かだったのですが、大げさな方向ではなく繊細な表情に変わってた。
その作りこんだ芝居の元となったイヴァーノの動機もムラとは少し違っていたように思います。
基本は変わらない。信じていたものに裏切られ、復讐を!という動機。そこにさらに怒りの裏にある虚しさが見えた。オットーを中心とするこの世の全てが信じるに足らないものである、という不信感が感じられた。銀橋でせおっち(瀬央ゆりあ)のロナルドに語るセリフだったかな、それでぐっと来ました。ディアナに「信じていいのよ」と言われてディアナを見る、その目の表情は冷たく、哀しく、なんて目をするんだろう、と胸が痛みました。
その動機がラストシーンにつながるようになっているんですね。
ムラでも違っていた琴イヴァーノとれおんイヴァーノとはさらに違うものになっていた。れおんイヴァーノは存在感がすごすぎて、もし轟オットーと共に現れたら「社長はこちらさまですね」とれおんくんを見てしまいそう(イシちゃんは会長)。ゴールドスタイン社の成長の原動力となった幹部、だけど経歴は営業畑を歩んできた人、みたいな。琴イヴァーノはもう少しソフト。麻央オットーはやっぱり社長、でも経営実権はこちらの方が握ってるのはなんとなくわかります、みたいな。経歴は経営企画かな。
細かい表情や仕草もでも、琴イヴァーノは見た目はソフトで良い人を演じている、が裏ではすごい目つきをしている。皮肉をこめて唇の端を上げて笑う。冷たい声が刺さる。2面性を強調していたように思います。
他にも細かいことですが「説明する手間が省けた」のセリフは、笑い声を入れながら。こことか、れおんくんとは全く違う表現になっていた。
全体でのバランスも琴ちゃんは考えていたと思う。やりたい放題に全場面フルパワー!ってことにはなってなかった。麻央くん(麻央侑希)とのバランスも考えたのでしょうか。
でも実は、最初はその辺の琴ちゃんの変化がわからなくて、楽しみにしていた船上パーティでの「勝つか負けるか」の歌とか「Who knows?」で、ムラで気持ち良いほどに迫力たっぷりに歌いあげていたのが、全然物足りなくて「え?え?え?」と動揺してました。なんか微妙に音程を外してる部分もあるし。もしかして琴ちゃん、喉痛めてるとか発熱してるとかで、思うようにパワーが出せないの!?と。
でも、新公の前に観た本公演では、元気いっぱい踊ってたしカポエイラの歌もしっかり歌ってよね。だから多分大丈夫(もし本当に体調不良だったのだったらすみません)。と思いつつどきどきしながら観てました。疲れた。お前は母か(銀橋歌はエコーの掛かり具合も大劇比下がっていた気がするので、音響側の調整もあったかも?)。
じっくり観ていると先に書いたように芝居が細かくなっていて、ていねいに繊細に表現している。だんだんパワーが上がってきて、ロナルドを突き飛ばす辺りからパワーが抑えきれなくなってきて、最後の場面がピークに。
結局、また、ピカレスクものになっていた。感情の流れをていねいにつないできて、オットーに「あなたがうらやましかった!」と最後の本音を告げて死んでいった。
琴ちゃん、撃たれ方も変えてましたね。弾の勢いに押された反動のように身体を反応させていた。相変わらずの身体能力。
衣装の補正もよくなってたと思う。最初の登場シーンで、身体にスーツがぴったりしてるな、結局れおんくんの衣装着なかったのかな?と思った位。ムラではもう少しシワとかあった気がしたから。でも多分一緒。身体も痩せたので補正を調整したんでしょうか。
衣装といえば船上パーティの開襟、頑張ってました。おいおい、って位開けてて、琴ちゃんムネあるはずでしょ?東宝の客席は2階の上まで角度あるんだから無理しないで~!とちょっとハラハラ(笑)。でもキレイに開けてましたね。
★
今回の東宝の新人公演での琴ちゃんのテーマは芝居だったのではないかなーと、勝手に憶測してます。心情の変化をきちんと表現できる芝居。観客に伝わる芝居。私はできていたと思うんですが、どうでしょうか。
歌もダンスも超級、に芝居が追いついてきている。研5の試験ではお芝居、1番だったのでしたっけ。どこまでいくんだ、礼真琴。
遠征してよかったです。しみじみ。
★
他の人では、瀬央っちはムラ同様良かったです。銀橋の歌に力強さも出ていたし、本当によい人なのにイヴァーノに騙され(「せおっち、そのひと、悪いひとだからついてっちゃだめー!」と心のなかで叫んでました)、あざ笑われ、凶行に走る転換点がよくわかった。キレ方も良かった。最後にディアナの顔を見て一瞬正気に戻るところも。
しどりゅう(紫藤りゅう)も、ムラから良くなっていたかな。力強く印象に残るようになっていた。ムラではちょっと大人しすぎたから。
98期コンビの天華えまちゃん(レイモンド)と綾凰華ちゃん(パット)も良かったです。琴ちゃんの役をやった人はついつい見ちゃいますね。
新聞売りのりらちゃん(紫りら)が可愛くて!顔にそばかすつけてた?
★
いつもは東宝の新公をご覧になっている方、機会があればぜひムラの新公ご覧になってみてください。面白いですよ!緊張感がただならないですよ!ひっくり返るような出来や気持ち良いほどの突き抜け方を目の当たりにすることもありますよ!生徒さんたちの最初の素の役作りが見えて、本当に面白い。立ち見なら当日でも買えることが多いし!
(エリザのムラ新公も観ましたが面白かったです!)
私もできるなら、これからも琴ちゃんの東宝の新公は観てみたい。あとチャンスは2回ですが。
★
追加。
新公の前の本公演も観たのですが、あまりの琴ちゃんの痩せっぷりにびっくりしてしまいました。ムラの後半もたいがい痩せてたのに、また痩せてる~!顔つきが違う!そういうお年ごろもあるとは思うんですが、ちょっと、大丈夫?と心配です。東宝公演もあと少し。身体に気をつけてやり遂げて欲しいです。その後、運動会、あるのね。
それはやはり、大劇場で観た琴ちゃん(礼真琴)のイヴァーノがものすごく気に入ったから。パワー全開の悪役。楽しかったからもう1回観たい!「Who knows?」聞きたい!
それと、今後ここまで色濃い悪役を演じる琴ちゃんを観ることはないかもしれない、と思ったから。もともとイヴァーノは特殊で、トップさんがやっていて出番が多い(人物が描かれてるとは言わない)悪役。琴ちゃんの持ち味とも遠いと思われているので、間もなく新公を卒業する琴ちゃんが今後本役でこのような役に当たることはなかなか難しいかも、と思ったのです。れおんくん(柚希礼音)ですらマトモな悪役はイヴァーノとショーヴラン位で、そもそも数が少ないものだと思うし。
などと自分に言い訳しながら着々と行く算段を整えました。
もう一つ、以前から気になっていたことがありました。東宝の新人公演のレポを読んでいると、何かテンションが違うのです。どの組もそうなのですが、感想が大人しい。よかった、まとまってた、とかそういう感想が多い。
琴ちゃんファンになって自分が大劇場で観るようになると特に、東宝での感想が自分がムラで観た時の感想と何か違う。同じものを観ているはずなのに?なんでなんだろう?ムラだとハチャメチャだったり突き抜けたり、良くても悪くても感想が飛び跳ねてるのです。琴ちゃんが東宝行くと小さくまとまっちゃうのか?いや、他の組の新公の感想も同じような傾向だし、とずっと引っかかるものを感じていました。
今回やっとわかりました。
観ているものが違ってました。そりゃ、東宝の新公の感想はこういうふうになるわ!と合点がいきました。
東宝はムラの新公を踏まえて、生徒さんそれぞれが課題を修正する。そして全体がひとつにまとまるよう整えていってるんですね。だから良くも悪くもムラの新公より“大人しい”ものになってしまうんだ。せっかくとんがってたところが丸くなってしまうんだ。まだ荒削りな新人さんたちが演じる公演だからそれがより顕著なのでしょう。
特に今回は東宝新公の開催日が遅くて、じっくり練り直す時間があったのでしょうね。琴ちゃんに関していえば、大劇場と東宝、2パターンの新公を観たような気持ちになりました。
★
琴ちゃんはものすごくていねいに役作りをしてました。ひとつひとつの芝居の動作や声の調子、表情を計算し、作りこんでいました。一瞬も気を抜いてなかったんじゃないか。ムラ同様かなり表情豊かだったのですが、大げさな方向ではなく繊細な表情に変わってた。
その作りこんだ芝居の元となったイヴァーノの動機もムラとは少し違っていたように思います。
基本は変わらない。信じていたものに裏切られ、復讐を!という動機。そこにさらに怒りの裏にある虚しさが見えた。オットーを中心とするこの世の全てが信じるに足らないものである、という不信感が感じられた。銀橋でせおっち(瀬央ゆりあ)のロナルドに語るセリフだったかな、それでぐっと来ました。ディアナに「信じていいのよ」と言われてディアナを見る、その目の表情は冷たく、哀しく、なんて目をするんだろう、と胸が痛みました。
その動機がラストシーンにつながるようになっているんですね。
ムラでも違っていた琴イヴァーノとれおんイヴァーノとはさらに違うものになっていた。れおんイヴァーノは存在感がすごすぎて、もし轟オットーと共に現れたら「社長はこちらさまですね」とれおんくんを見てしまいそう(イシちゃんは会長)。ゴールドスタイン社の成長の原動力となった幹部、だけど経歴は営業畑を歩んできた人、みたいな。琴イヴァーノはもう少しソフト。麻央オットーはやっぱり社長、でも経営実権はこちらの方が握ってるのはなんとなくわかります、みたいな。経歴は経営企画かな。
細かい表情や仕草もでも、琴イヴァーノは見た目はソフトで良い人を演じている、が裏ではすごい目つきをしている。皮肉をこめて唇の端を上げて笑う。冷たい声が刺さる。2面性を強調していたように思います。
他にも細かいことですが「説明する手間が省けた」のセリフは、笑い声を入れながら。こことか、れおんくんとは全く違う表現になっていた。
全体でのバランスも琴ちゃんは考えていたと思う。やりたい放題に全場面フルパワー!ってことにはなってなかった。麻央くん(麻央侑希)とのバランスも考えたのでしょうか。
でも実は、最初はその辺の琴ちゃんの変化がわからなくて、楽しみにしていた船上パーティでの「勝つか負けるか」の歌とか「Who knows?」で、ムラで気持ち良いほどに迫力たっぷりに歌いあげていたのが、全然物足りなくて「え?え?え?」と動揺してました。なんか微妙に音程を外してる部分もあるし。もしかして琴ちゃん、喉痛めてるとか発熱してるとかで、思うようにパワーが出せないの!?と。
でも、新公の前に観た本公演では、元気いっぱい踊ってたしカポエイラの歌もしっかり歌ってよね。だから多分大丈夫(もし本当に体調不良だったのだったらすみません)。と思いつつどきどきしながら観てました。疲れた。お前は母か(銀橋歌はエコーの掛かり具合も大劇比下がっていた気がするので、音響側の調整もあったかも?)。
じっくり観ていると先に書いたように芝居が細かくなっていて、ていねいに繊細に表現している。だんだんパワーが上がってきて、ロナルドを突き飛ばす辺りからパワーが抑えきれなくなってきて、最後の場面がピークに。
結局、また、ピカレスクものになっていた。感情の流れをていねいにつないできて、オットーに「あなたがうらやましかった!」と最後の本音を告げて死んでいった。
琴ちゃん、撃たれ方も変えてましたね。弾の勢いに押された反動のように身体を反応させていた。相変わらずの身体能力。
衣装の補正もよくなってたと思う。最初の登場シーンで、身体にスーツがぴったりしてるな、結局れおんくんの衣装着なかったのかな?と思った位。ムラではもう少しシワとかあった気がしたから。でも多分一緒。身体も痩せたので補正を調整したんでしょうか。
衣装といえば船上パーティの開襟、頑張ってました。おいおい、って位開けてて、琴ちゃんムネあるはずでしょ?東宝の客席は2階の上まで角度あるんだから無理しないで~!とちょっとハラハラ(笑)。でもキレイに開けてましたね。
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今回の東宝の新人公演での琴ちゃんのテーマは芝居だったのではないかなーと、勝手に憶測してます。心情の変化をきちんと表現できる芝居。観客に伝わる芝居。私はできていたと思うんですが、どうでしょうか。
歌もダンスも超級、に芝居が追いついてきている。研5の試験ではお芝居、1番だったのでしたっけ。どこまでいくんだ、礼真琴。
遠征してよかったです。しみじみ。
★
他の人では、瀬央っちはムラ同様良かったです。銀橋の歌に力強さも出ていたし、本当によい人なのにイヴァーノに騙され(「せおっち、そのひと、悪いひとだからついてっちゃだめー!」と心のなかで叫んでました)、あざ笑われ、凶行に走る転換点がよくわかった。キレ方も良かった。最後にディアナの顔を見て一瞬正気に戻るところも。
しどりゅう(紫藤りゅう)も、ムラから良くなっていたかな。力強く印象に残るようになっていた。ムラではちょっと大人しすぎたから。
98期コンビの天華えまちゃん(レイモンド)と綾凰華ちゃん(パット)も良かったです。琴ちゃんの役をやった人はついつい見ちゃいますね。
新聞売りのりらちゃん(紫りら)が可愛くて!顔にそばかすつけてた?
★
いつもは東宝の新公をご覧になっている方、機会があればぜひムラの新公ご覧になってみてください。面白いですよ!緊張感がただならないですよ!ひっくり返るような出来や気持ち良いほどの突き抜け方を目の当たりにすることもありますよ!生徒さんたちの最初の素の役作りが見えて、本当に面白い。立ち見なら当日でも買えることが多いし!
(エリザのムラ新公も観ましたが面白かったです!)
私もできるなら、これからも琴ちゃんの東宝の新公は観てみたい。あとチャンスは2回ですが。
★
追加。
新公の前の本公演も観たのですが、あまりの琴ちゃんの痩せっぷりにびっくりしてしまいました。ムラの後半もたいがい痩せてたのに、また痩せてる~!顔つきが違う!そういうお年ごろもあるとは思うんですが、ちょっと、大丈夫?と心配です。東宝公演もあと少し。身体に気をつけてやり遂げて欲しいです。その後、運動会、あるのね。
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