プレミア席

2004年11月13日 宝塚
私は千秋楽のチケットは、プレミアで買った。

あっさりと。

迷わなかった。まみさんの時、精一杯頑張って2階7列だったのだけど、それでも大階段の上に立つまみさんが見えなくて、なんとなく悲しかった。

だから、汐美さんの最後は、1階で観たかった。大階段を見上げる位置に座りたかった。

ラッキーなことに、手に入れた籍は通路横で、目の前を遮るものもなかった。どれだけ前でも、前の席に背の高い人が座ったり、観劇慣れしていなくて背中を浮かせたりする人が座ってしまうと、観たい場所が見えないのは同じ。

今回は、観たい場所がいくらでもストレスなく見える。そういう意味で心残りない席だった。

だが、気になっていたことがあった。前過ぎるのではないか、ということ。

私などのような、初心者のファンよりも、入り出もほとんど行かないようなファンよりも、前に座るべき人がいるんじゃないか。いくらプレミアだからといって、許されるんだろうか・・・。気にしていた。小心者だから。

だが、実際に席についてみると、見知った顔の方が、私の周囲の席のあちらにも、こちらにも。皆、プレミアを手に入れたり、根性で並んで手に入れたりされていたようだった。よかった。私だけじゃなかった。

いいよね、最後だもん。自分で自分の席を選んでも。

いよいよ、最後の汐美さんの大劇場の舞台の幕が開く・・・。

       ☆

最初の登場の位置は、オペラですぐ捉えられる。赤い衣装、着たきり雀なんだけど、美しくてキレイ。

マイクの感度がいいのか、玄宗を讃える歌で、汐美さんの声がよく聞こえてくる。

相変わらず、立っているだけの間も、他の人のセリフに細かく表情を変えている。とうこちゃんの安禄山が踊ると、油断ならないといった感じの目つきで、とうこちゃんを追いかける。

幕前のしぃちゃんとの芝居。どこかの記事で言っていたように、2枚舌の腹黒さのようなものを出そうとしていた。

この芝居、後ろで見ると、いや、どこで観ても、どーしよーもない駄作なんだけど、5列目以内で観ると、マシな芝居に思えてしまうのだ。ケロちゃんだけではなくて、いろいろな人が細かい芝居をしているのがよくわかるから。例えば、銀橋で玉環が玄宗に連れ去られた後の会話、「そんな立派な方が・・・」檀ちゃんの指先が細かく震えていたりする。そういうことに気がついてしまうと、まだ「あれ?以外と駄作じゃない?」なんて思えるのだ。

楽のお楽しみ(?)アドリブは、不老長寿の薬の場面。もともとここはなんでもないシーンだったのに、ケロちゃんの力技で笑いを取れる場面になっていた。

まず、とうこちゃんがオウムの腹話術。「ばんざいばんざい、千秋楽ばんざい」「お前の声に似ているな。もう一回」「ばん・・・」「もういい」。

劇場中が笑ってしまって、その後、とうこちゃんが悠然と退場しても、高力士が「お心を許されませんように」といって、全てウケてしまって笑いが巻き起こる。

不老長寿の薬はケロちゃんが「皆が試してみたいと」。打ち合わせてあったのだろう、従者達まで皆手を上げる。「ダメだ、私の分が無くなる」「では、高力士に試してもらってみては」。いつもは一人で笑いを取っているケロちゃんだが、今回は皆で。

みっこちゃんまでが、アラビアの国使への親書は「思うは宰相のことばかり・・・」ときたもんだから、もう大笑い。

よくその後、真面目に芝居に戻ったなぁ、と場をひっぱるわたるくん、エライ!

その後は淡々といつも通り芝居が進む。この辺りから眠くなってくる。いつもきっちり睡眠時間に当てていたせいで、楽だというのに反射的に眠くなってしまうのだ。

なんとか髪飾りのシーンも見届け(・・・たと思う)、陳貴妃(オウムのこと)も殺され、戦闘シーンへ。

大セリ上で戦っているところ、とうこちゃん、ケロちゃん、みっこちゃん、えんでぃの77期そろい踏みだった(+すずみん)。

銀橋に出たわたるくんを迎えに行くケロちゃん。「陛下!」と言う。わたるくんをかばい、とうこちゃんには「安禄山め!」と言い捨てる。勝手にセリフ増やしてます。

幕があき、最後のシーン。

玄宗を説得するセリフ。いつも以上に心の底からの辛い気持ちと説得しなければならないというせめぎ合いが感じ取れた。

玄宗と楊貴妃を引き離す辺りで、目がうるんでいたように思う。いや、もしかすると、一番最初に登場したところから、目がうるんでいたかもしれない。

楊貴妃が殺されるところで、手を合わせ、呟く。いつもなら「・・・どうか」だけなのだけど、今回は「皇帝陛下!」だった。これが、ケロちゃんの大劇場最後のセリフだった。

ゆっくりと左袖に消えて行く人の姿を見ていた。

そこまで見終えて私の集中力は切れてしまった。目の前で美しいシーンが繰り広げられているのぼんやりながめていた。

幕が降りた。

       ☆

千秋楽の入りは見たいと思っていた。もちろん。でも、あまり早すぎると行けない。息子を保育園に送ってからでないと行けないから。

前日の出が済んでからでないと、時間はわからないので、じりじりしながら日付けが変わる位まで待っていた。出に行っている友人にメールをし、教えてもらう。9時15分スタンバイ。なんとか間に合う!良かった!手紙も手渡しできるということで、慌てて夜中に書き上げる。

翌朝、息子を保育園に連れて出る。途中、盛大に鼻水が出て慌てる。発熱しないでね!お呼出がかかりませんように!

9時10分頃に花の道のところに着くと、白いウエアを着た人がずらりと並んでいた。すごい数。

一番最後に並ぶ。まだまだ人が来ていた。とうこちゃん他、他の星組生が入り、ようやく汐美さん登場。真っ白な上下に頭に白い冠、背中に羽根のようなものを背負っていた。

ひとりひとり、お手紙を渡す。一番端だったので、時々巻き起こる笑い声の理由はわからなかった。が、最後にどうも、とうこちゃんたち生徒が紛れて、お手紙を渡したらしい。 

全員で楽屋口前に移動。普段なら全員ゆっくり一番前に一列で並べるのに、やはり3重になっても入りきらない。汐美さんも次から次へときて、楽屋口前に並びきらないファンの姿を見て、驚きつつ、嬉しそうだった。 

全員で掛け声。前もって紙がくばられていた。

そんな姿をビデオ撮りしていたのは、既に退団されたちー坊さんだった。

楽屋入り口で振り返る。手を振る。

まぎれも無い、スターさんの退団の入り、だった。 

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