スター

2004年11月26日 宝塚
ありゃりゃ、また間違えてるよ。退団爆弾が降ってきたのは、8月2日でなくて、9月2日だった。相変わらず、いろいろ間違えてます。自分自身の間違いも面白いので、修正せずに置いてます。

なんでそんなインパクトのある日を間違えたかな?多分、“まだ暑かった”って記憶していたんだろう。
あの日からさらさらと時間が流れて、もうコートがいるような季節まで流れてしまった。12月末は寒いかな、暖かいかな、私は何を思っているかな・・・。

          ☆

私が宝塚を、汐美さんを知ったのは「LUNA/BMB」の時だった(といっても、その頃の私はまみさんしか目に入ってなかったけど)。

汐美さんはその時からプログラムは1P大写りだったし、階段も一人降りだったし。

だから私はスターな汐美さんしか知らない。

その汐美さんはスターなまま、今、宝塚を去ろうとしている。

宝塚ファンになってしばらくして、生徒さんたちの中には「路線」だの「スター」だのがいることを知った。その定義は今でもよくわからないのだけど、入団したとき、いや入団する前から決まっている人もいるらしい。その持って生まれた華というもので。

いつぞやの音楽学校の先生(校長?副校長?)がインタビューで、「スターになる人は音楽学校のお稽古場にいるときからわかります」とおっしゃっていた。

きっつい世界だ。

舞台に立とうという人が普通な人のわけがない。人よりできる、人より優れていると思うからこそ、舞台に立とうとするのだと思う。さらに宝塚の舞台だ、人より美しいと思えないと。だって入試条件に「容姿端麗」があるのだもの。

なのに、思い知らされるのだ。自分よりできる人、自分より優れている人、自分より美しい人、そして、自分より評価される人がいるということを。

成績、でスターになれるものでもない。檀ちゃんがいつも成績最下位だったのは有名な話。90周年の生徒大集合写真から割り出すと、ケロちゃんは研5では下から2番目だったらしい・・・。

ただ「路線=トップ路線=トップ候補」になるには、新人公演の主演をやっていないといけないらしい。このところは5組化したこともあり、「スター」である人はほぼ新公主役をやっている。

だから、汐美さんも新公主役をやっていると思い込んでいた。だって私はスターな汐美さんからしか知らなかったんだもの。やっていないと教えてもらったのは、ソナタの頃ではなかったかなぁ?樹里ちゃんもやっていない、コムちゃんもやってなかったが役代わり公演というものをやっていた、などという知識も増えてきた。

新公の主役はさておき、下級生の頃から新公や本公演、バウなどでちょこちょこ役がついたりする。立ち位置も指示される。同期として入ったにもかかわらず、自分と他人に差がつく。同期でなくても下級生の方がいい位置にいられたりすることもある。自分のスター度を毎公演に徹底的に思い知らされるわけだ。

きっつい。

それって努力でどうにかなるものなんだろうか?やる気でどうにかなるもんなんだろうか?(この際、資金は別として)

心がズタズタにならないんだろうか。

ズタズタになる位、弱い心だとやっていけないんだろうな。それを乗り越える位の強さとしたたかさが必要というわけか。

そんな場所で汐美さんは14年いたわけだ。

歌劇団の公式HPには「スターファイル」というものがある。文字通り「スター」じゃないと掲載されることはない。ここに今、載っている人で、新公主役をやっていないのは汐美・樹里だけだ。もう今後、新公主役をやっていない人でここに載るような人は出てこないだろう。

思い知らされ、周りから言われ、自覚し、そして舞台に立つ。その身を削られるような想いが、ジェンヌさんを輝かせる要因のひとつだと思う。

そうしてスターというものはできあがっていく。

ムラでの汐美さんは、地元出身ということもあってのんびりしたムードを漂わせていることが多い。だがこれが東京に行くと一気にスターモードに入ってしまう。私はスターな汐美さんを見るのが大好きで、ムラではほとんどしなかった入り出をいそいそしてしてしまうことも多かった。

私が感じることだけど、汐美さん自身も、スターな自分を好きだったように思う。だって舞台人だもん、タカラジェンヌだもん、スターな自分が嫌いだったらジェンヌなんてやっていられないと思う。

東京は劇場のある場所も都会のど真ん中、汐美さんのファンも西より東の方が圧倒的に多い。華やかな場所に呼ばれることも多かったろう、一般人の視線もまた厳しくも賞賛に溢れていたことだろう(ムラではほんっとその辺、ジェンヌさんが歩いているからなー)。

そういう雰囲気の中、汐美さんはスターのオーラをまとっていた。颯爽と歩く姿は紛れもなくスターさんだった。格好よかった。素敵だった。

じゃあ、スターでなくなっていくってことはどういうことなんだろう、と考える。

だから・・・私がスターな汐美さんしか知らないで終わるってことは、幸せなのか。そうなのか?

でも、私はもっともっと汐美さんを観ていたかった。ずっとずっと観ていたかった。

ずっとでなくてもいい、あと1年でもいい、2年でもいい、このうつくしいスターを観ていたかった。

そして、最後の「スター汐美真帆」の公演が、今日から始まる。

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