お芝居が始まった。さすが「長安」、ご贔屓の楽だというのに眠気がひたひたと襲ってくる。あれだけ寝まくった報いというか条件反射というか。

幽閉シーンから回想に戻って最初のシーン、母娘のお芝居が大劇場の時とちょっと変わっているようだ。ヒステリックな高笑いが抑えられたようだ。先代皇帝が娘の名前を呼ぶようになっていたし。

ケロちゃんが上手から出てくる。赤い武将の姿で剣を持った振り。美しい。立ち姿は足の先まで男役だ。メイクは少し優しげになっているような気がした。マイクもケロちゃんの声をよく拾ってくれるので、コーラスの中からもよく聞こえてくる。

ケロちゃんが出ていない舞台をぼけーっと観ていると、やっぱりヘンなセリフが気になってくる。玄宗「なかなか美しい」ってさぁ、これから息子の嫁を奪おうっていうんだから、「なかなか」じゃなくて「目も覚めるほど」美しいとかそういうことじゃないのか?油断させるために「なかなか」と言っているのか?

3姉妹。なんだか仙道さんの声がおかしい。歌になってマイクが入っていないことに気がついた。マイクトラブルかしら?
私は観ていないけど「ガイズ」の東宝楽の時、ケロちゃんのマイクが入らず、地声でがなり続け、声をつぶしてしまったことがあった。その数日後に沖縄の自衛隊イベントでメインで歌わねばならなかったのに、ケロちゃんはがなり続けたのだ。
仙道さんは声は出るほうだと思うのだけど、全くといっていいほどA席の後ろには聞こえてこなかった。楽ってこういうトラブルがつきものなのだろうか。もしかして、今日、この公演でケロちゃんのマイクが入らなかったらどうしよう、などという不安に駆られた。

祝いの席。楊貴妃として初めて参内する割りには、檀ちゃんには既に貫禄がある。ケロちゃんが安禄山を見る鋭い目つきは健在。扇を翻しながらとうこちゃんと踊るちかちゃんの可愛らしさ。もうこれで見納め。

幕前でのお芝居。ケロちゃん、声の抑揚もやや押さえ気味?大劇場ではもっと派手にやっていたように思うけど。幕が開いて、まとぶんととうこちゃんの言い争い。まとぶんは逆に東宝に来てからより熱くなったような気がする。二人を諌める陳玄礼将軍。皇帝陛下が大好き、とこの辺りから顔に書いてある。

ここからまた眠い場面。うとうと。いかん、いかん、せめて楽くらいまともに見ようと思っていたのだが。檀ちゃんの髪飾りや衣装を見て集中する。あれだけごてごて飾ってもまだ負けない檀ちゃんの美しさ。

さて、大劇の楽ではアドリブが満載で客席巻き込んで大爆笑だったシーン。安禄山が籠を抱えて出てくる。「しゃべる鳥でございます」の辺りから何が起こるか予想がついた客席はくすくす笑い。大劇場ではそのまましゃべっていたとうこちゃん、今回はマントで口元を隠し「センシュウラクバンザイ」。大劇場ほど後を引く笑いにはならなかったけど、楽しかった。
ケロちゃんたちは、不老不死の薬の味見を先に済ませてしまったらしい。しかも美味しいらしい。そのままの美しい姿で不老不死なら私も大賛成だ。
みっこちゃん宰相は今回は「思うは李林哺のことのみ」と読み上げ、目が悪くなったのかと返されていた。
お芝居で何かできるのはここだけ。あれは自分たちで考えるらしい。掛け合いの練習までするんだろうか。

そしてまたながーいねむーい場面。本当に寝ちゃうのか!?ご贔屓の楽に!?自分!?とツッコミ入れていたが、どうも時々意識を飛ばしていたらしい。「愛のソナタ」でもあんまり寝た記憶がないんだがなぁ。

3姉妹の歌でやっと目が覚める。今度は仙道さんの歌もちゃんと聞こえた。貢物オヤジーズは、えんでぃさん、紫蘭さんが甲高い声で、最後のみきちぐは低い声でオチをつけていた。
楊貴妃はライチを届けたちかちゃんに「いつもありがとう」とセリフを増やしていた。

とうこちゃん、頬の傷は耳の後ろに仕込んだ赤い塗料(?)でつけているそうだが、よく見ると確かに襲う前に耳の後ろに指をやっていた。私が見ていた回で、失敗はなかった。オウムを殺す場面でも、刺した後、何かの細工で籠の中にオウムを落としているはず、と見ていたがとうとうわからずじまいだった。

陳玄礼将軍やすずみんが(役名出てこないんだもん)「安禄山に謀反の疑いが」と言っているのに、楊貴妃におぼれまくる玄宗。ケロちゃん、片膝ついて控えたまま幕が閉まっていくのだけど、ここの表情がねぇ。視線はひたすらわたるくんの方を追っている。

前楽の時から気になっていたのだけど、有力者に謀反の恐れありという一大事なのに、いちゃいちゃしている君主をどうやったらそんなほほえましい、暖かい目で見守れるというのだろう。
皇帝はしょうがない。色香に溺れちゃってるんだから。でも側近のアナタがそんな「いいご夫婦だ、うむうむ」みたいな顔してたら、国も滅びるってば。ここは「何言ってんだ、この皇帝。謀反だぞ、謀反!!」って諌めなくてどーするの!?この表情は「陳玄礼が玄宗と楊貴妃」を見守る以上に「ケロが大好きなわたるさんと檀ちゃん」を見ているように思えた。このトップコンビの下で辞めれてよ
かった、もうこの場所から二人を見守ることはできないけど、きっと二人なら仲良く次の公演も引っ張っていってくれるだろう、そんな風に穏やかな気持ちが表情からもあふれていた。
また素になってるよと、とほほ、だったけどもういいかとも思えた。最後なんだもん。好きにやらせてあげて欲しいと。国が滅びようがどっちでもいい。ケロちゃんさえ納得いけば楽はもういいじゃないか、話がどうなろうと。

戦乱の場面。陳玄礼いや汐美真帆は叫ぶ叫ぶ。「陛下!」「陛下!」「安禄山!」。好きなだけ言わせてあげて。大好きな人たちを残していくのだから。

「お前たちにも責任がある」。師匠がおっしゃるとおり、いたく傷つく陳玄礼。楽でもそれ相応に傷ついていた。引き離す場面も、大劇ほど力は入ってなかったが、踏ん切りをつけるように左右へ二人を分けていた。
玄宗がすずみんを突き飛ばさんばかりにする。押しとどめたすずみんをなだめる陳玄礼。最後のセリフは大劇と同じ「皇帝陛下」だった。そしてその姿がゆっくりと左袖に消えた。

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