17時頃。

お芝居が終わり、ロビーに出る。途中、泣きはらした友人がいた。「お芝居で泣いちゃったの?」びっくり(ごめん)。お芝居そのものでないたわけではなくて、汐美さんの最後だから、ということで泣いていたらしいが。

皆一斉にトイレに行っていた。終演後はガードに入りそのままフェアウエルパーティの会場まで誘導される。トイレに行っている余裕はないはず。私もトイレに行く。白い服を着た友人たちがいっぱい。特に今回は会から「白い服で」という指示はなかったが、自主的に全身白という人が多い様子だった。

実はこの幕間、何をしていたか何を話したかあまり覚えていない。それだけもう気持ちが最後の「ドルチェ・ヴィータ」に向かっていたのだろう。ショーの開演時間が何時からだったか?ちょっと押すことがある、みたいな話をしたことは覚えている。出待ちにそなえてもこもこに着込んでいたから、暑くて喉が渇いていたことも覚えている。

(この幕間だけではないけど、師匠と私を知っている人が私に「師匠、○○で見掛けましたよ」と何人も教えてくれました(笑)。師匠、すっかり有名人なようです)

皆がパラパラと客席に戻っていく。

17時30分頃。

早めに客席が埋まっていく。やはりちょっと開演が押しているようだ。アナウンスをじっと待っている間、客席は静かな緊張感に包まれ、誰もが息を飲んでステージを見つめていた。

開演アナウンス。

今度こそ最後の汐美さんの舞台。

リアルト橋を降りるわたるくんは、今回もちゃんとケロちゃんの手を握って行ってくれた。アルレッキーノのイヤリング、私は初めてみるタイプだった。いつもどおり、百花さんをしっかりエスコートして踊る。
ストップモーション、とうこちゃんがしっかりケロちゃんの手を握って去っていった。
花市場。しいちゃんと仲良しの水兵さん。歌い出すとものすごい拍手。花売り娘からのプレゼントはなし。街の女に誘われて右袖に消えるとき、しいちゃんの肩を叩いてうながす。
かのちかちゃんが花で衣装を飾って登場。手首にも花を巻いている。船乗りから白いバラを一輪。嬉しそうに花かごに刺そうとしていた。退場の時にその花だけもって帰ろうとしたのに、残念なことにセリの下に落ちてしまった。後で誰か回収してくれただろうか。

サテリコン。檀ちゃんからみっこちゃんに花とキスと囁きのプレゼント。「愛してる、ずっと愛してる」だったかな。
コーザノストラ登場。踊る場面からなんだかにこにこしている。いいのか、コーザノストラが。うめちゃんになんて囁いていたのだろう。やっぱり「ありがとう」かなぁ?
楽でも操られるダンスの時の男役の色気はすさまじかった。なんて美しいのだろう。なんて身体がよく動くのだろう。なんて切ない表情をするのだろう。ドルチェ・ヴィータの抱き締めは前楽同様やっぱり甘えるような身体寄せ、だった。

船上の場面。わたるセレブから白いバラを一輪もらった。大劇の時は喜びの余り倒れていたけど、今回は小さく投げキスだけ。喜んでいるのは喜んでいたけど。
どうしてこう薄くなっちゃったんだろうと考えてみるけど、邪推だが「やりすぎ」に対して組全体が釘を刺されたんじゃないかなぁ?ショーの構成そのものが「やりすぎ」だから注意されてもそれはしょうがないかとも思うが。

もらったバラを胸のポケットに刺して出てくる航海士。踊る間に何度も落ちそうになってハラハラ。最後は手に持って袖に引っ込んでいった。ちかちゃんはこの場面でも衣装にお花を飾っていた。アリデヴェルチで登場するときも大拍手。
みっこちゃんとお揃いの白いコサージュをつけていた。前楽ではここで泣きそうになっていたが、大丈夫そう。みなみちゃんの方が泣きそうな感じだった。終わったあとの船上からの拍手もなし、だった。

銀橋に出る。会場あちこちに視線を向けるケロちゃん。お母様、お兄様、その他大切な人がたくさん来ておられることだろう。まんべんなく見てくれるケロちゃんに感謝。
雷が鳴り、しゃがみこんだケロちゃんをわたるくんが抱き上げてくれてびっくり。嬉しかった。いつかやってくれるかな、と思ったけどとうとう最後で。わたるくんだって本当は細い人なのに。抱いたまま少しだけ銀橋を歩き、袖に駆け込む。きっと駆け込んだ後、ケロちゃんも含めて皆でわたるくんの衣装をむしりとっていただろう。すぐに海神にならないといけないのだから、本当は抱き上げ
ている時間なんてないはずだもの。

碧の洞窟。なぜその海神はスーツを着ているのだろう。普通の演出家なら、海神という人でない存在には、衣装で色をつけたくなるものではないだろうか。海神だけではない、海神の影たちもまた微妙に色の違うスーツ姿なのだ。
宝塚の過去の衣装リストをくれば、普通の人が海神に着せるだろう衣装はごまんとみつかるはずだ。ましてや体格のいいわたるくん。何を着せても着こなしてしまいそうという誘惑だってあるはずだ。

オギーは観客の想像力を信じているのだと思う。だから海神がなんの変哲もないスーツを着て現れる。少しアクセサリーをつけているだけ。だがそれは人ではない。海神なのだとわかる。少なくとも私にはわかった。「ドルチェ・ヴィータ」という作品にほれ込んで通った人たちももちろんわかっただろう。
海神は過去人であったもののなれの果てかもしれないとも想像できる。その海神と少女がつかのま恋に落ちる。異質な同士の恋。「触れ合えばわかるだろう、望むもの同じはずだと」。でも見た目やこころは同じでもその存在は同じではない。海神は少女を元いた世界に戻してやる。
度量の広さ、愛の大きさ。わたるくんの海神だからこそ何の衣装も要らない。その存在だけで伝えることのできる人だと思う。それを見抜き、演出するオギーもまたすごい。

フィナーレが始まる。始まってしまう。

リアルト橋の下のケロちゃん。ニコニコ笑っている。前楽の時とは心情が違うようだ。橋の上に立つとうこちゃんに真っすぐ手を伸ばす。わかるけど、わかるけど、あなたはこれから恋人と引き離され、ディアボロに連れて行かれるというのに。
恋人のちかちゃん。真っ白の衣装の胸のところを赤いお花で縁取っていた。とっても可愛い。どの場面でも退団者らしい飾りつけをしていた。女の子だもんね、ムラの楽ではできなかったものね。思い切りやりたいだけやらせてあげたいと思った。

「未練はないけれども」と歌うケロちゃん。清清しいけど、本人未練ないかもしれないけど(私はそうは思ってないけど)、私は未練ありまくり。楽でもやっぱりALL OKにならなかった。

ディアボロの手を取るケロちゃん。ちょっとためらいつつ、でも心の中ではためらってなんかいない。しっかりと握り締める。
銀橋に出る頃にはもうもっとニコニコ。踊りの最後で「とうこ!」と掛け声。これはやりたかったんだろうなぁ。そしてとうこちゃんとしっかり抱き合う。大きな拍手。とうこちゃんはもうボロボロだった。笑顔で下手袖に消えるケロちゃん。

【続く】

コメント