幸せの24時間その6「存在そのものが」続き
2005年1月4日 宝塚【続き】
スパニッシュの場面。ちかちゃんはまた可愛い花をつけていた。男役・汐美真帆が出てくる。ああ、なんて格好いいんだろう。素顔は普通の女性なのに、宝塚の舞台に立った途端、男役としてぱあっと輝く。これが最後なんて。貸切で聞ける掛け声が楽にもあった。ケロちゃんは「千秋楽」の「楽」だった。
わたるくんのソロがあって、いよいよケロちゃんが大階段の上にスタンバイしている。インタビューか何かで、階段を降りるとき、娘役さんたちが出迎えてくれるのが嬉しいといっていた。タカラジェンヌになった限りは皆が出迎えてくれる中を一人階段降りするというのは夢なのだろう。それがかなってよかった。
降りてくる黒エンビの胸には、コサージュも何もなかった。大劇場のときもなくて、忘れていたのかと思っていたけど、違うようだ。スポットが当たる。これまでで一番大きな拍手。私も常にオペラを上げていたのだけど、ここだけはダメだと思いオペラを置いて手が痛くなるまで拍手した。
そうだ、ここで大階段の真ん中に立てることが、コサージュなのだ。退団者として何より大きな花束をもらっているのだ。
オギーのショーで退団するということが決まったとき。友人たちと心配していたことがある。オギーは普通の階段降りを作らないのだ。背負う羽根もあまり好きではないと聞いたことがある。博多座でもセンター降りはタニちゃんからで、ケロちゃんは星原さんと一緒にサイドを降りていた。
「バビロン」でもそうだった。あれだけ退団者がいたのに(いたから、か?)センターであきちゃんが最初から歌い続け、ねったんやかよちゃん、そんちゃん、なるみんたちは歌なしで次々とサイドを降りた。拍手を入れにくかった。退団なのだから精一杯大きな拍手で迎えたかったのだが。オギーの美学、こだわりもこういうときはちょっとうらめしかった。
大劇場でどうなるのだろうと思って、初日、あまり期待せず、息を詰めて見ていたら、最初に真ん中をケロちゃんが降りてきてくれた。ソロもあった。嬉しかった。まるでエトワールのような目立つ演出じゃないか。オギーありがとう。感謝してもしきれないと思った。
真ん中を堂々と降りてくる存在そのものが、退団者・汐美真帆ヘのオギーの餞だったのだろう。だからコサージュはなくてもいいのだ。
“ありがとうございました”と礼をしながら客席へ。また大きな拍手。いったん袖消えてからまたとうこちゃんの横へ。幸せそうにわたるくんを迎え、銀橋へ。この時もにこにこしていた。銀端から帰るとき、大劇場では組子たちの顔をひとりひとりしっかり見ていたのだけど、今回はずっと客席の方を見ていた。
私は最後の最後までケロちゃんだけを見ていたけど、幕があっという間に下りてしまった。
組長さんが出てきて、楽のご挨拶と今後の予定。星組にも来年があるんだ、と遠い世界のような気持ちで聞いていた。退団者からの手紙の代読。
ちかちゃんのはムラでは聞いていなかったから、どんなことを言うのだろうと聞いていた。数学をしなくて済むと喜んだエピソードには笑いが。
ケロちゃんはムラとは変えてきていた。在団中に亡くしたお父さま、お兄さまのこと。最近亡くなられたおばあさま、おじさまのこと。さらにこの公演中にはおじさまを亡くされていたそうだ。記事などで時々お身内のことが語られていたことはあったけど、本人の口(代読だけど)から語られるのは初めてで、胸に迫った。これだけ近しい人を次々と亡くしても、舞台に立っている以上は駆けつけることもできなかったろう。それだけの価値が舞台にあるのか?と身内を大切にする人であればあるほど悩んだこともあったのではないだろうか。厳しい世界にずっと彼女はいたのだ。
みっこちゃんはムラとほとんど同じだった。
幕が上がり、退団者が降りてくる。まずはちかちゃん。ムラではケロちゃんからだったので、いきなり感があったがちかちゃんがいてくれてちょっと一息つけた。ちかちゃんの挨拶は男前だった。宝塚では娘役さんの方が実は男っぽいと聞いたこともある。キュートなんだけど格好よかった。
そしてケロちゃん。組長に名前を呼ばれると、ムラ同様「はーーーーーい」と高い長い声で返事が。ムラの時より余裕があったようで、ゆっくり会場全体に目を配りながら降りてきた。ああ、やっぱり男役メイクと袴姿が似合わない。お花は可愛らしい感じではなく、胡蝶蘭で作られたシンプルな真っ白い花束。幕が開い
たとき、檀ちゃんとえんでぃさんが持っている花を見て、ほっとしたケロファンも多かったはずだ。単なる胡蝶蘭ではなくて、花芯のところ辺りがキラキラ光っていたから、ジルコニアか何かを埋め込んであったのだろう。実は凝った作りのようだった。
ムラの時のようなタメもなく、落ち着いて語り始めた。それはまさにディナーショーや公演など、彼女が大切にしてきたセリフをつないだものだった。「我が人生幕が開く」。「血と砂」のセリフだった。公演セリフの中ではこれだけ。
「血と砂」ファンとしては背中がぞくっとするほど嬉しかった。だけどよく考えてみれば、汐美ファン以外にはわからない挨拶かもしれない。それでもいいと、ファンがわかってくれれればいいと、ファンに気持ちを届けたいと思ってくれたのだろうか。そこまで思ってくれたのだろうか。行ってきます、未来へ行ってきますと締めくくった。まだまだ「前進あるのみ」なんだな。
みっこちゃん。もうひとつの夢ってなんだろうな。
「サヨナラ宝塚」はムラと同じ。退団者の意向で歌は決められるという話だったけど、相談して決めたのかな?とうこちゃんと手をつなぐ。ニコニコしているケロちゃん。とうこちゃんは左手にディアボロのアクセサリーをつけているのだけどそれがキラキラ光っていた。とうこちゃんから先に泣き出して、ケロちゃんの頬にも涙が伝っていた。でもどちらもムラほどボロボロにはなってなかったようだった。
2度ほど幕が上がった。わたるくんと退団者だけが舞台に残っていたとき、わたるくんがあの男前な姿で優しくお姉さんのように語り掛ける。言い残したことはないの?と。3人ともうなずく。ケロちゃんもとても満足そうにしっかりとうなずいた。みっこちゃんが「星組が大好きです」とだけ付け加えると、ガッツポーズをしていた。
最後の幕が降りたあと、会場の拍手が静かに終息し、皆が席を立ち始めた。特にスタンディングということもなく、落ち着いて終わりを迎えられた。
時計は見ていなかったけど、19時頃だったと思う。
☆
やっとここまで来ました。ぜいぜい。私は8日のトークショーに行く予定はないけれど、なんとかそれまでに24時間シリーズ書き終えたいと思っています。あとはパーティと夜の語り、かな?あと2回位で終わるはずです(いや、終わらんかも)。自分のためにも書き残しておかないと、ね。
トークショーは行けるものなら行ってます。関西なら徹夜してましたね。しかし2週間前にも上京したばかりで、もう無理です。これが本当に最後とは思いたくないささやかな抵抗なのかもしれません。
スパニッシュの場面。ちかちゃんはまた可愛い花をつけていた。男役・汐美真帆が出てくる。ああ、なんて格好いいんだろう。素顔は普通の女性なのに、宝塚の舞台に立った途端、男役としてぱあっと輝く。これが最後なんて。貸切で聞ける掛け声が楽にもあった。ケロちゃんは「千秋楽」の「楽」だった。
わたるくんのソロがあって、いよいよケロちゃんが大階段の上にスタンバイしている。インタビューか何かで、階段を降りるとき、娘役さんたちが出迎えてくれるのが嬉しいといっていた。タカラジェンヌになった限りは皆が出迎えてくれる中を一人階段降りするというのは夢なのだろう。それがかなってよかった。
降りてくる黒エンビの胸には、コサージュも何もなかった。大劇場のときもなくて、忘れていたのかと思っていたけど、違うようだ。スポットが当たる。これまでで一番大きな拍手。私も常にオペラを上げていたのだけど、ここだけはダメだと思いオペラを置いて手が痛くなるまで拍手した。
そうだ、ここで大階段の真ん中に立てることが、コサージュなのだ。退団者として何より大きな花束をもらっているのだ。
オギーのショーで退団するということが決まったとき。友人たちと心配していたことがある。オギーは普通の階段降りを作らないのだ。背負う羽根もあまり好きではないと聞いたことがある。博多座でもセンター降りはタニちゃんからで、ケロちゃんは星原さんと一緒にサイドを降りていた。
「バビロン」でもそうだった。あれだけ退団者がいたのに(いたから、か?)センターであきちゃんが最初から歌い続け、ねったんやかよちゃん、そんちゃん、なるみんたちは歌なしで次々とサイドを降りた。拍手を入れにくかった。退団なのだから精一杯大きな拍手で迎えたかったのだが。オギーの美学、こだわりもこういうときはちょっとうらめしかった。
大劇場でどうなるのだろうと思って、初日、あまり期待せず、息を詰めて見ていたら、最初に真ん中をケロちゃんが降りてきてくれた。ソロもあった。嬉しかった。まるでエトワールのような目立つ演出じゃないか。オギーありがとう。感謝してもしきれないと思った。
真ん中を堂々と降りてくる存在そのものが、退団者・汐美真帆ヘのオギーの餞だったのだろう。だからコサージュはなくてもいいのだ。
“ありがとうございました”と礼をしながら客席へ。また大きな拍手。いったん袖消えてからまたとうこちゃんの横へ。幸せそうにわたるくんを迎え、銀橋へ。この時もにこにこしていた。銀端から帰るとき、大劇場では組子たちの顔をひとりひとりしっかり見ていたのだけど、今回はずっと客席の方を見ていた。
私は最後の最後までケロちゃんだけを見ていたけど、幕があっという間に下りてしまった。
組長さんが出てきて、楽のご挨拶と今後の予定。星組にも来年があるんだ、と遠い世界のような気持ちで聞いていた。退団者からの手紙の代読。
ちかちゃんのはムラでは聞いていなかったから、どんなことを言うのだろうと聞いていた。数学をしなくて済むと喜んだエピソードには笑いが。
ケロちゃんはムラとは変えてきていた。在団中に亡くしたお父さま、お兄さまのこと。最近亡くなられたおばあさま、おじさまのこと。さらにこの公演中にはおじさまを亡くされていたそうだ。記事などで時々お身内のことが語られていたことはあったけど、本人の口(代読だけど)から語られるのは初めてで、胸に迫った。これだけ近しい人を次々と亡くしても、舞台に立っている以上は駆けつけることもできなかったろう。それだけの価値が舞台にあるのか?と身内を大切にする人であればあるほど悩んだこともあったのではないだろうか。厳しい世界にずっと彼女はいたのだ。
みっこちゃんはムラとほとんど同じだった。
幕が上がり、退団者が降りてくる。まずはちかちゃん。ムラではケロちゃんからだったので、いきなり感があったがちかちゃんがいてくれてちょっと一息つけた。ちかちゃんの挨拶は男前だった。宝塚では娘役さんの方が実は男っぽいと聞いたこともある。キュートなんだけど格好よかった。
そしてケロちゃん。組長に名前を呼ばれると、ムラ同様「はーーーーーい」と高い長い声で返事が。ムラの時より余裕があったようで、ゆっくり会場全体に目を配りながら降りてきた。ああ、やっぱり男役メイクと袴姿が似合わない。お花は可愛らしい感じではなく、胡蝶蘭で作られたシンプルな真っ白い花束。幕が開い
たとき、檀ちゃんとえんでぃさんが持っている花を見て、ほっとしたケロファンも多かったはずだ。単なる胡蝶蘭ではなくて、花芯のところ辺りがキラキラ光っていたから、ジルコニアか何かを埋め込んであったのだろう。実は凝った作りのようだった。
ムラの時のようなタメもなく、落ち着いて語り始めた。それはまさにディナーショーや公演など、彼女が大切にしてきたセリフをつないだものだった。「我が人生幕が開く」。「血と砂」のセリフだった。公演セリフの中ではこれだけ。
「血と砂」ファンとしては背中がぞくっとするほど嬉しかった。だけどよく考えてみれば、汐美ファン以外にはわからない挨拶かもしれない。それでもいいと、ファンがわかってくれれればいいと、ファンに気持ちを届けたいと思ってくれたのだろうか。そこまで思ってくれたのだろうか。行ってきます、未来へ行ってきますと締めくくった。まだまだ「前進あるのみ」なんだな。
みっこちゃん。もうひとつの夢ってなんだろうな。
「サヨナラ宝塚」はムラと同じ。退団者の意向で歌は決められるという話だったけど、相談して決めたのかな?とうこちゃんと手をつなぐ。ニコニコしているケロちゃん。とうこちゃんは左手にディアボロのアクセサリーをつけているのだけどそれがキラキラ光っていた。とうこちゃんから先に泣き出して、ケロちゃんの頬にも涙が伝っていた。でもどちらもムラほどボロボロにはなってなかったようだった。
2度ほど幕が上がった。わたるくんと退団者だけが舞台に残っていたとき、わたるくんがあの男前な姿で優しくお姉さんのように語り掛ける。言い残したことはないの?と。3人ともうなずく。ケロちゃんもとても満足そうにしっかりとうなずいた。みっこちゃんが「星組が大好きです」とだけ付け加えると、ガッツポーズをしていた。
最後の幕が降りたあと、会場の拍手が静かに終息し、皆が席を立ち始めた。特にスタンディングということもなく、落ち着いて終わりを迎えられた。
時計は見ていなかったけど、19時頃だったと思う。
☆
やっとここまで来ました。ぜいぜい。私は8日のトークショーに行く予定はないけれど、なんとかそれまでに24時間シリーズ書き終えたいと思っています。あとはパーティと夜の語り、かな?あと2回位で終わるはずです(いや、終わらんかも)。自分のためにも書き残しておかないと、ね。
トークショーは行けるものなら行ってます。関西なら徹夜してましたね。しかし2週間前にも上京したばかりで、もう無理です。これが本当に最後とは思いたくないささやかな抵抗なのかもしれません。
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