黒を主役にする、とうこちゃんの力を「龍星」にみた
2005年10月1日 宝塚星組DC公演「龍星」初日観てきました。
数日前から私は歪んだ期待で一杯でした。児玉っちの脚本はどれだけぶっ壊れているだろう。そのぶっ壊れた脚本をとうこちゃんがどれだけまともに見せてくれるだろう。楽に向けてとうこちゃんがそれをどこまで力技で感動できる話に持って行くだろう。わくわく。
なんて。
それがなんと、マトモでした!!びっくりだよ。
もちろん、児玉っちは児玉っち。ちょっと前の少女漫画みたいな作品で、群雄割拠な大中国を舞台にしたと思えない底の浅い玉座をめぐる話にしちゃってるし、なんだかもう、セオリー通りっていうかあらかさまだし。
それが「面白い」と思える作品になっているのは、やはりとうこちゃんの力なんだと思う。とうこちゃんの力プラスキャスティングがはまっていること。
最初はとうこちゃんとれおんくんとのW主演か?みたいな感じでびっくり。それも普通の作品なら、れおんの役が主役のやる役。比重、ではなくつまりれおんが白い正統派の役で、とうこちゃんの役は2番手の黒い役。この黒い役の方が「龍星」では主役なのだ。無理に持ち味を逆にれおんくんに黒い役を、とうこちゃんに白い役を振らなかったのは正解。でもその分、黒い役をやるとうこちゃんに力がないとこの話は成立しない。れおんくんにもまた華と力があるから。
とうこちゃんの役はなかなかセリフが出て来ない。本物の「流星」とその身代わり、でもない実は3番目の存在のとうこちゃんの演じる人物。だからなんだかその存在が頼りない。密偵として意のままに動かされているようにしか、1幕の最後近くまで見えてしまう。
それがとうこちゃんが真実を知り、最後の歌になるところで全て引っくり返す。意志が目覚め、野望が伝わって来る。とうこちゃんの力技だ。
私が座っていたのが下手のやや後ろだったせいか、何度かとうこちゃんと視線が合った気がした。とうこちゃんが意志を持ってにらみを効かせた時の視線がまっすぐこちらに来て、どきっとした。そしてその思いが伝わってきたような気がした。とうこちゃんの名前にふさわしい瞳の強さだった。
2幕目になっても見せ場的にはなんだかれおんくんの方が美味しいような気がした。相手役がうめちゃんていうのも大きい。今回のうめちゃん、女だてらに兵士、しかも2刀流でカッコイイのなんの。活き活きしているしそれでいて可愛くてヒロイン。殺陣もたくさんある。うめちゃんはこうでなくちゃ!れおんくんとの並びもばっちりで、目にも美しいカップル。1幕目には剣を合わせていた相手と2幕目最初にはきっちり出来上がっているし(笑)。そんなのが寄り添っているかられおんくんの株も上がる。
とうこちゃんの相手役は南海まりちゃん。なんでこの子がなかなか新公ヒロイン回ってこないのか、と不満に思っていたから、今回のヒロイン抜てきは正直に嬉しい。しかし、華と生気に満ち溢れたうめちゃんの隣に並ぶとなんだか地味。とうこちゃんとの恋愛も人質とニセ皇帝、れおん&うめのように簡単な関係ではないからストレートには伝わりにくい。
話自体はそんなに複雑にドラマを積み上げていくものではなくて、かなりの比率でショー的な場面があるから(児玉っち、BMBみたいなショーを作ってみたらいいのに)、それを観ているだけで楽しいし、話を追いきれなくて困る、みたいなこともない。
2幕のクライマックスは、とうこちゃんとれおんくんの対決場面。でも2幕目始め当たりから空しさを感じさせ始めたとうこちゃん流星の末路はなんとなくわかってくる。そしてそれはとうこちゃんにふさわしい。
れおんくんの末路もまた、こうだろうな、というもの。地味だなぁと思っていたみなみちゃんもラストに来て、こうくるからこの子はこういう役づくりだったんだ、と納得。いじらしく可愛らしかった。
1幕目のラストと2幕目のラストは、とうこちゃんの同じセリフで締めくくられる。だが全く同じセリフなのに、その心情は全く違う。それがドンとくる。
2幕目の最後のあのとうこちゃんの痛々しさ。こちらまでこころがひりひりする。「凍てついた明日」のジェレミーの「死にに行かなくてもいいじゃないか!」に匹敵する(←言い過ぎ誉め過ぎかも)残された者の慟哭が込められた叫び。それを生で聞かせてもらった。
うめちゃんは最後にまた出て来るが、またそれもうめちゃんらしい。なんだかおっ母さんで(笑)。
ちょっと誉め過ぎたかもしれない。まだ初日なのでなるべくネタばれしないように書いたつもりだけど、ぜひ観に行っていただきたい。とうこちゃんの黒い魅力、そして生の傷付いた表情を観て欲しいから。あくまで脚本には期待しすぎずに、がポイントかも(笑)。私は1回きりの予定だったけど是非是非もっと観たいよー。
その他のキャストたちも頑張ってる。きんさんもいいし、みきちぐも面白い。あかしもなかなか美味しい役だけど、「いつも冷静なお前が」には笑ってしまった。「いつも熱いお前が」ならわかるが(笑)。衣装もかなり新調じゃないかな?いくつか長安のが紛れてるようだったけど、どれもなかなか綺麗。特に群舞のが美しくて楽しい。セットは大きな階段をメインにすえているだけで簡略化されたものなので、その分予算は衣装に使えたのかも。音楽もとてもよかった。とうこちゃんの歌唱力のせいもあるだろうけど、今回は歌詞がとてもわかりやすかった。いや、児玉っちの単純明快な歌詞のせいかも(笑)。
最後にお約束(?)のケロちゃん話。観る前はケロちゃんがこの作品に出てたらなーと具体的な願望は特にないままに思っていた。単に淋しかっただけだけど。でもこの作品に出ていたら、あのとうこちゃんは観られなかっただろうな、と思う。
だって、ケロちゃん「とうこ・らぶオーラ」を半径3mには出しまくってしまうし、それがあるととうこちゃんも精神的余裕が出てしまう。「巌流」と同じでキャリア的に周りから突出しているとうこちゃんだけど、そこに今回はたった一人で立つことで、最後のあの孤独の絶唱が際立つ。ケロちゃんがいたらこうはならなかっただろう。
ま、そんなこんなで、とうこちゃんってすごいな、強いな、哀しいほど強いな、強いから哀しいな、でもその強さが魅力だ、好きだよ、なんて思ってしまった。
数日前から私は歪んだ期待で一杯でした。児玉っちの脚本はどれだけぶっ壊れているだろう。そのぶっ壊れた脚本をとうこちゃんがどれだけまともに見せてくれるだろう。楽に向けてとうこちゃんがそれをどこまで力技で感動できる話に持って行くだろう。わくわく。
なんて。
それがなんと、マトモでした!!びっくりだよ。
もちろん、児玉っちは児玉っち。ちょっと前の少女漫画みたいな作品で、群雄割拠な大中国を舞台にしたと思えない底の浅い玉座をめぐる話にしちゃってるし、なんだかもう、セオリー通りっていうかあらかさまだし。
それが「面白い」と思える作品になっているのは、やはりとうこちゃんの力なんだと思う。とうこちゃんの力プラスキャスティングがはまっていること。
最初はとうこちゃんとれおんくんとのW主演か?みたいな感じでびっくり。それも普通の作品なら、れおんの役が主役のやる役。比重、ではなくつまりれおんが白い正統派の役で、とうこちゃんの役は2番手の黒い役。この黒い役の方が「龍星」では主役なのだ。無理に持ち味を逆にれおんくんに黒い役を、とうこちゃんに白い役を振らなかったのは正解。でもその分、黒い役をやるとうこちゃんに力がないとこの話は成立しない。れおんくんにもまた華と力があるから。
とうこちゃんの役はなかなかセリフが出て来ない。本物の「流星」とその身代わり、でもない実は3番目の存在のとうこちゃんの演じる人物。だからなんだかその存在が頼りない。密偵として意のままに動かされているようにしか、1幕の最後近くまで見えてしまう。
それがとうこちゃんが真実を知り、最後の歌になるところで全て引っくり返す。意志が目覚め、野望が伝わって来る。とうこちゃんの力技だ。
私が座っていたのが下手のやや後ろだったせいか、何度かとうこちゃんと視線が合った気がした。とうこちゃんが意志を持ってにらみを効かせた時の視線がまっすぐこちらに来て、どきっとした。そしてその思いが伝わってきたような気がした。とうこちゃんの名前にふさわしい瞳の強さだった。
2幕目になっても見せ場的にはなんだかれおんくんの方が美味しいような気がした。相手役がうめちゃんていうのも大きい。今回のうめちゃん、女だてらに兵士、しかも2刀流でカッコイイのなんの。活き活きしているしそれでいて可愛くてヒロイン。殺陣もたくさんある。うめちゃんはこうでなくちゃ!れおんくんとの並びもばっちりで、目にも美しいカップル。1幕目には剣を合わせていた相手と2幕目最初にはきっちり出来上がっているし(笑)。そんなのが寄り添っているかられおんくんの株も上がる。
とうこちゃんの相手役は南海まりちゃん。なんでこの子がなかなか新公ヒロイン回ってこないのか、と不満に思っていたから、今回のヒロイン抜てきは正直に嬉しい。しかし、華と生気に満ち溢れたうめちゃんの隣に並ぶとなんだか地味。とうこちゃんとの恋愛も人質とニセ皇帝、れおん&うめのように簡単な関係ではないからストレートには伝わりにくい。
話自体はそんなに複雑にドラマを積み上げていくものではなくて、かなりの比率でショー的な場面があるから(児玉っち、BMBみたいなショーを作ってみたらいいのに)、それを観ているだけで楽しいし、話を追いきれなくて困る、みたいなこともない。
2幕のクライマックスは、とうこちゃんとれおんくんの対決場面。でも2幕目始め当たりから空しさを感じさせ始めたとうこちゃん流星の末路はなんとなくわかってくる。そしてそれはとうこちゃんにふさわしい。
れおんくんの末路もまた、こうだろうな、というもの。地味だなぁと思っていたみなみちゃんもラストに来て、こうくるからこの子はこういう役づくりだったんだ、と納得。いじらしく可愛らしかった。
1幕目のラストと2幕目のラストは、とうこちゃんの同じセリフで締めくくられる。だが全く同じセリフなのに、その心情は全く違う。それがドンとくる。
2幕目の最後のあのとうこちゃんの痛々しさ。こちらまでこころがひりひりする。「凍てついた明日」のジェレミーの「死にに行かなくてもいいじゃないか!」に匹敵する(←言い過ぎ誉め過ぎかも)残された者の慟哭が込められた叫び。それを生で聞かせてもらった。
うめちゃんは最後にまた出て来るが、またそれもうめちゃんらしい。なんだかおっ母さんで(笑)。
ちょっと誉め過ぎたかもしれない。まだ初日なのでなるべくネタばれしないように書いたつもりだけど、ぜひ観に行っていただきたい。とうこちゃんの黒い魅力、そして生の傷付いた表情を観て欲しいから。あくまで脚本には期待しすぎずに、がポイントかも(笑)。私は1回きりの予定だったけど是非是非もっと観たいよー。
その他のキャストたちも頑張ってる。きんさんもいいし、みきちぐも面白い。あかしもなかなか美味しい役だけど、「いつも冷静なお前が」には笑ってしまった。「いつも熱いお前が」ならわかるが(笑)。衣装もかなり新調じゃないかな?いくつか長安のが紛れてるようだったけど、どれもなかなか綺麗。特に群舞のが美しくて楽しい。セットは大きな階段をメインにすえているだけで簡略化されたものなので、その分予算は衣装に使えたのかも。音楽もとてもよかった。とうこちゃんの歌唱力のせいもあるだろうけど、今回は歌詞がとてもわかりやすかった。いや、児玉っちの単純明快な歌詞のせいかも(笑)。
最後にお約束(?)のケロちゃん話。観る前はケロちゃんがこの作品に出てたらなーと具体的な願望は特にないままに思っていた。単に淋しかっただけだけど。でもこの作品に出ていたら、あのとうこちゃんは観られなかっただろうな、と思う。
だって、ケロちゃん「とうこ・らぶオーラ」を半径3mには出しまくってしまうし、それがあるととうこちゃんも精神的余裕が出てしまう。「巌流」と同じでキャリア的に周りから突出しているとうこちゃんだけど、そこに今回はたった一人で立つことで、最後のあの孤独の絶唱が際立つ。ケロちゃんがいたらこうはならなかっただろう。
ま、そんなこんなで、とうこちゃんってすごいな、強いな、哀しいほど強いな、強いから哀しいな、でもその強さが魅力だ、好きだよ、なんて思ってしまった。
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