11月8日

2005年11月8日 宝塚
私はたかちゃんは辞めないと思っていた。

「あんなヘナチョコショーが最後のショー作品なんて嫌だー」とわめき、「やっぱりそろそろだよね」などと軽口を叩きつつ、実は51%くらいの気持ちで“たかちゃんは辞めないのではないか”と思っていた。

劇場にも足を運び、実際にチケット取りをしたり、友人から回ってくるチケットのお話など、自分の肌で感じるチケット事情は、やはり宙組の動員力はすごい、だった。

商売などをしていると、扱う品目で売れ行きの差というものがあろう。売りの安定した定番商品で売上を稼ぎ、それ以外の商品にてこ入れして売上アップをめざす。時には投資先行で新規商品を立ち上げたりもするだろう。もちろん定番商品の原価低減努力もするだろう。

宙組で安定した利益を確保しているなら、歌劇団がその柱に据えているたかちゃんを辞めさせるのは、大変な勇気がいるというか、惜しいと思うはずだ。辞めるにしても戦略方針がしっかり固まってからでないと辞めさせられないんじゃないか、だからもしかしてまだ大丈夫じゃないか。そう思っていた。

まぁでも、ガイチさんが辞めるのも、たかちゃんの退団が決まったからなんだろうな、と今は思える。ベルばらで“当面の利益を確保”ってのも、主力商品=宙組の世代交代による一時的な(?)売上低下を見越してのことではないか。などなど、符合してくる事柄がいくつも浮かんでくる。次の宙組トップが誰かは知らないけど、それなりに話題作りをして盛り上げる戦術も決まっているんだろうな、と思う。

でも私はたかちゃんに辞めないで欲しかった。花ちゃんと二人、美しい夢の世界。タカラヅカを見た!と満足して帰途につける組。タカラヅカを初めて観る人にも安心して勧められる組。誰だって自分が好きな趣味を紹介するときは「よかったわ!」と言って欲しいものだもの。宙組なら安心、だったもの。

私がまみさんでどっぷり観劇生活に漬かり始めたときからのトップさんたち。その最後がたかちゃんだった。いよいよ、まみさんと同時期トップさんは全ていなくなってしまうんだな。

           ☆

さらに私は、花ちゃんは残ってくれると思っていた。まだまだ続けてくれると思っていた。たかちゃんが辞めるのはしょうがないとしても、花ちゃんは辞めないと信じていた。

だって12年トップやってるんだよ?しかも休演一回もなし!?宝塚の90年の歴史の1/9以上だよ?こんな娘役はもう後にも先にも出てこないだろう。次のトップがタニちゃんだろうがとうこちゃんだろうが、きちんと合わせてくれただろう。12年やっていても回りの誰よりも少女が、姫ができてしまうんだよ。

私はまみさんからのヅカファンだが、最初の観劇は「白夜伝説」だった。そこで出てきたミーミルちゃんがまだトップをやっている!?ということに驚愕したが、すぐにそれは感謝の気持ちに変わった。いてくれてありがとう。間に合ってよかった。こんな偉大な娘役を生で観ることができてよかった。永く続けてくれたからこそ、私みたいな者でも観ることができたんだ。

トゥーランドットの気品、クリスティーヌの愛らしさ、マリーアントワネットの真の女王ぶり・・・。生で観ることのできた全ての作品で裏切られることはなかった。

ビデオでしか観たことのない作品でも感激度は変わらない。雪組「エリザベート」の鏡の間のあの美しさ。素晴らしかった。「激情」のフラメンコのソロ。なんであんなに踊れるの?なんで普段は少女なのにあんなに女ができるの?

もし辞めるとしても、ミュージックサロンごときでお茶をにごさず、バウくらいはやってくれるよね?大劇場でだっていいじゃん。サヨナラショー1時間やってもまだ足りないよ。だからまだ辞めない。辞めない。そう信じていた。

なのに辞めちゃうんだ。まだできるはずなのに辞めちゃうんだ。

なんだか気が抜けたみたいになってしまって、発表後もあんまりネットをさまよう気分になれなかった。どんな生徒さんでもアンチがいて、辞めると発表になればそれを喜ぶ人がいる。まみさんのときだってケロちゃんのときだってそれはそうだった。別にそれを何とも思わなかった。自分が贔屓を失う哀しみに自己陶酔していてそれらは撥ねつけられたのに。檀ちゃんや樹里ちゃんといった割と好きな生徒さんの場合も、キライな人には分かってもらわなくて結構!と強気でいられたのに。

なのに、花ちゃんを失うことへの喪失感はそれらとは違っていて、ひたすら悲しい、心に穴が開いた感じ。花ちゃんが辞めることを喜ぶ記述を目にするのは耐えられない。

私は花ちゃんが相当好きだったんだなぁ。いや、好きというよりよりどころにしていたんだなぁ。私が宝塚に求めるもの、“美しい癒し”を花ちゃんに依存していたんだなぁ。これからどうすりゃいいんだ。正直、途方に暮れている。

         ☆

そして11月8日。花ちゃんが辞めると発表になった日の1年前は、汐美さんが大劇場で大階段を降りた日だった。入りから芝居、ショー、出、さよならパーティと全てを見届けることができた日。あの日から1年がたってしまったんだ。

ご本人関係で忘れられないシーンはたくさんあるけれど、とうこちゃんの絶唱はすごかった。ディアボロ(=悪魔)が大切なものを失うときはこんな風に嘆くんだ、と力づくで納得させられた。

あの日の映像は残ってないんだろうか。CSでも大劇楽は放映されないんだよね。もったいない。だからこそこちらでの楽は観ておいてよかった。

宙組の楽は観たいなぁ。うん。観たい。

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