21時頃。

フェアウエルパーティの入り口のところには、お茶会の時にもあった汐美さんのこれまでの公演のパネルが立てかけてあり、入り口には白い花でアーチが作られていた。

左右に細長い会場で、奥や手前には椅子とテーブルが。中央にも立食用のテーブルがあり、バイキングスタイルで食事ができるようになっていた。中央にはステージがあり、向かって右には「歌劇」の袴姿に赤いバラの汐美さんの写真が頭身大に引き延ばされ、カットアウトに仕立ててあった。向かって左は氷の彫刻。この公演、というかラスト汐美のシンボルマークのハートとリボの彫像だった。

素敵な会場だった。広さもちょうどよく、品よくキレイにまとめられて雰囲気がとても良かった。

会場の入り口側にはスクリーンも降ろしてあった。

飲み物も自由、食事もいろいろそろえられていて、汐美さんが来るまでゆったりした気持ちで飲み、食べられた。「食事どころではないっ」というパーティもあるからなぁ(といっても私は1つしか知らないけど)。有り難い。写真撮影もあるようで、20人単位でステージに上がる練習をしたりもしていた。

22時前。

心行くまで食べたなぁという頃(笑)、汐美さんが来られたとアナウンスが入る。ステージ周辺に皆が集まって来る。私たちは氷の彫像の横、ピアノの前辺りにいた。贅沢にもムラのお茶会で演奏してくださった姉妹デュオのお二人の生演奏が入った。

汐美さんが袴姿のまま、お花を手に会場に入ってこられた。会場が暗くなり、色とりどりのペンライトでお出迎え。綺麗ですね、と喜んでおられた。汐美さんを再び、こんな間近で見られるなんて、と素直に嬉しかった。

早速お客さま。ムラ同様、同期のとうこちゃん、えんでぃさん、みっこちゃん、それとなるちゃん。子武蔵、子小次郎。どうも、みんなでみっこちゃんのパーティに先に行っていたのではないだろうか。会場に入って来るなり、とうこちゃんとえんでぃさんがカットアウトに「ケロ〜」と抱きつく。「こらこら、本物はこっち」と笑うケロちゃん。

同期の楽しいお話が続く。うーん、あんまりもう覚えていない。みっこちゃんの話し方、本当に天然でほんわかしていて、あの男役らしい舞台姿とはえらく差がある。ファンの方々が「みっこちゃん大好き!」と声をかける気持ちがよくわかる。なるちゃんが向かいの芸術座(だっけ?)の6階からケロちゃんの出を見て、携帯で撮影していた話や、舞台メイクのまま東宝の楽屋に遊びに来た話など
していたかな。

思えば、私はOGさんの姿をまじまじと生で見たのは初めてかもしれない(除:まみさん)。顔はあのなるちゃんなのに、髪の毛を伸ばしてスカートをはいてうーんうーんうーん・・・。うまく言えないけど、なんだかちょっと違うような。そのなるちゃん、退団後、ケロちゃんがスカート買いに行くのにつきあってくれるそうだ。ど、どうですかねぇ。似合わないと思います(小声)。

子武蔵ちゃんもケロちゃんが大好きな様子。お手伝い係(?)なんですかね。そういう役割だったらしい。お弁当を作ってきたこともあったらしい。

ケロちゃんがキザだという話しになり、とうこちゃんたちからジュリーの物まねをしろとはやし立てられるケロちゃん。「帽子がないとできない」と逃げようとしたのに、子小次郎が帽子をかぶってきていて差し出したからもう逃げられない。拍手の中、瞬間芸で帽子をハスにかぶり、ポーズを取り表情を作る。拍手!そうか、こうやって劇団の中で宴会芸をやっていたのだな。皆で暖かくはやし立
て合いながらやっていたんだな。劇団の中でのケロちゃんを見たようでちょっとほっこりした。

次のお客さまは82期だっけ?れおんくんたちの期の星組生が揃って来てくれた。ひとりひとり、れおんくんは全ツの相手役だったことなど、ケロちゃんとのつながりやエピソードを披露してくれる。れおんくんの隣にいる女の子が、南海まりちゃんだとはすぐには気付かなかった。山型の細い目をした背の高い今風の女の子があの威厳と慈愛に満ちたシシィ?いかんいかん、また現実と舞台のギャップに興味をもっては。またはまってしまう。
みなみちゃんは楽のデュエットダンスで泣くのをこらえるあまり、身体がガチガチになってしまったと告白していた。ケロちゃんも「私は何と踊っているのだろう」と思ったと言っていた。そして「死ぬまで忘れません、死んでも忘れません。生まれ変わってもまたケロさんとデュエットダンスを踊りたいです」といってくれた。ありがとう。ありがとう。
その他の子たちも、実家からケロちゃんが美味しいと言うパンを届けてくれる子(天霧真世ちゃんだったっけ?)、「巌流」でハモニカを吹いていて吹き口をおとしてしまった子、個性豊かにいろいろな子がいた。さすがに7つ位期が下になるので、皆、今風の若者という感じ。こんな子たちを舞台に置くとどうなるかを見抜く劇団の人たちというのはすごいなぁと思う。

お客さまを迎えて話している間じゅう、ケロちゃんは一番下手で皆の顔を見るように立っていた。だから私の方からは後姿(あうあう)。髪をオールバックにまとめていて後姿まで完璧に整えてあった。そのうなじから男役のフェロモンが漂っていた。ちゃんと普段メイクにしているのに、男役だった。あとわずかな時間で男役・汐美真帆はいなくなるっていうのに。

彼女たちが退場してから、写真撮影。ステージの真ん中の汐美さんを囲むように左右から20人ずつ上がっては降りて。

その後、前もって書いておいたメッセージカードを渡す。近付いてみると汐美さんはとてもとても美しかった。ムラの時ほど疲れてはいないようだった。袴の腰のところに「汐美真帆」の着到板の札を挟んでいた。最後、楽屋を出る時にこれを外して持って出るんだな。

それから何があったっけ?ピアノのところでムラのお茶会でもあったケロちゃんのためのインストゥルメンタルの演奏と歌、だったかな。イスストの時はスクリーンにある映像が映し出されていた。その解説をケロちゃんがしてくれた。嬉しかった。その映像(というか写真)について知りたかったから。

そして歌。この段階でそろそろ23時。今度こそ、男役として歌う最後の歌になるだろうと思った。

ピアノの横で立ったまま歌うケロちゃん。お茶会の時も目の前で歌ってもらえたが、あまりのことにぼーっとなっていて実はよく覚えていなかった。今回はそういうことがないように、しっかりしっかり目に焼きつけるつもりで見ていた。

演奏が終わると、その姉妹に「大変でしょうが、舞台頑張って下さい。汐美真帆を受け継いで下さい」みたいな事を言っていた。

【続く】
19時すぎ。

私は会服を買っていないので、ガードに入ることは考えてなかったけどそこそこには出て行かなければ立つ場所さえなくなるかもしれないと、友人とエスカレーターへ向かった。
窓からひょいと外を見てぎょっとした。東宝前を埋め尽くす人人人。いつの間にかえらいことになっていた。確か公演前は閑散としていたはずなのに。他の会の人たちが先にガードに入っていてくれるのだ。本当にありがたい。このご恩を返すことはもうできないのが申し訳ない。

東宝は地の利もよく、千秋楽は日曜日ということもあって普通の宝塚ファンがギャラリーとしてやってくる。ムラは月曜日だし通常の楽は昼一回公演だから誰もが気軽に行くものではないけど。

外に出る。思っていたほど寒くない。東京在住の友人たちに「手袋・マフラー・カイロは必携」と言われていたのだが、なしでも大丈夫そう。雨も降らなくて助かった。

まずはケロ会の人たちが集まっているところへ行ってみる。劇場の帝国側に集まっていた。歩道の横にはシルバーのオープンカーが。白い服を着た人たちが乗ったり降りたりしていたから、退団者用だとわかる。ケロちゃん用かと思ったが、代表さんのいつもの赤い車が後ろに停まったので、やっぱりケロちゃん用はこちらだな、と。するとオープンカーはちかちゃん用だろう。
とりあえずその会が動くところへついて行こうかと相談していた。途中、何度も緑野師匠に電話をしたのだがつながらない。私やドリーさんがフェアウエルパーティに出ている間、師匠たちはどうしているのだろうと気になったし、どこで出を見ているのかと思ったから。

会の人たちが移動を始める。シャンテ側、他の会がガードに入っている一番前に入れてもらうらしい。ドリーさんがその列にいるのをみつけた。シャンテ側はもう人でいっぱい。その後ろに入るのは不可能と考え、友人と劇場入り口まで戻る。一番入り口に近い場所がなんだかちょっと開いていたので、そこで見ることにする。映画館の看板が片づけられ、ガラス越しに楽屋口も見える場所でラッキーだった。

そこへある場所から緑野師匠とkineさん、サトリさんが偶然やってきた。びっくり。道理で携帯、通じないはずだ。

映画館では「ハウルの動く城」をやっていて、それの最終回が終わる時間を計算したりしていた。映画館の終演よりは遅くなることはないだろう、それまでに全生徒を出してしまうだろうから、遅くとも8時半までには出て来るんじゃないか?などとkineさんと話していた。師匠はkineさんの身長がもたれかかるのにちょうどよいらしく、身体を預けていた(お疲れさまです)。

8時10分頃。

叶千佳ちゃんが出て来る。会の人たちから掛け声がかかる。とっても可愛い。

さらにしばらく待つ。早く出て来て欲しいような、出て来て欲しくないような気分でいる間に、楽屋口から歓声が上がった。

汐美真帆。

会の人たちに手を振りながら進んでくる。どうしてもシャンテ側ばかりに向いてしまい、顔が見えない。前もって師匠たちと相談していたように、ケロちゃんが動くにつれて私たちも劇場前を帝国側へ移動していった。
会の人たちから声がかかる。「男役・汐美真帆ここにあり。14年間お疲れさまでした!」。
「皆様の愛を胸に、絶対幸せになります」だっけ。投げキスを2回程。そして「汐美真帆、宝塚を卒業します」と言い、車に乗り込み去って行った。

あっという間の出来事だった。東宝前に集まった人たちの全ての視線を集めて、汐美真帆は去っていった。宝塚スターとして堂々とした卒業だった。まぎれも無くスターさんだったよ。14年前、あどけない女の子だった生徒が、スターになって去っていったよ。

師匠たちは3人で、パーティが終わるまで食事をしているという。しかしパーティが終わるのははっきりいって何時になるかわからない。まぁ、3人いるからなんとかなるか、と一旦お別れ。ガードに入ってなかった他の友人とも合流し、フェアウエルの開かれる東京会館へ向かった。

日比谷の方は混むだろうと推測し、皇居側から回った。人気はなく、さくさく歩けた。大きな劇場がいくつも並ぶ、関西にはない雰囲気の場所。この辺りでミレナリオをやっているね、と話しながら歩く。同行の友人たちは関西の人ばかりだったからミレナリオには縁がない人ばかり。今年はこの退団騒ぎで神戸のルミナリエにも行けてなかった。

一緒にいた友人はみらんちゃんにも詳しい人だったので、「この公演、みらんちゃんいい位置でよく使われてたよね」と話しかける。「だから変な話、汐美さん退団後は汐美ファンが流れると思うよ。あとそのかとか」「えー、なんでそんなしんどいことを。ここはパーッとあさこちゃんとか行っておけばいいのに」と言うと「そういう人しか好きになんないんだよ!(笑)」そうか、そういうものか。

みらんちゃんに流れるか、そのかちゃんに流れるかはわからないけど、来年の今頃、汐美ファンがどこに行っているかな、と思う。もうすっかり他の人に夢中な人もいるだろう。私はどうなるかな?まみさんのサヨナラの時はもうケロちゃんをみつけていたけど、今は誰もいない。

歩いて間もなく東京会館というところで、ぱあっと光が目に飛び込んできた。ミレナリオだった。ルミナリエは人で人で大変なことになっているが、こちらはまだ余裕を持って歩けるようだった。
(ドリーさんにおうかがいしたところ、私たちが見たのはミレナリオのおまけ?枝?みたいなものだったらしいです。本体はもっとすごい人なのでしょうね)

ケロちゃんも会場に来る途中で、ミレナリオを見ただろうか。東京会館の入り口もまた、お茶会の時と同様、ミレナリオのように電飾が輝いていた。

会場に上がるエレベーターの前で待っていると、お花を持った袴姿の人が。みっこちゃんだった。みっこちゃんのパーティも同じ東京会館だった。みっこちゃんを見届けず東宝を後にして来たので、姿を見られて嬉しかった。さらに関係者パーティの方へ上がっていかれる人がいて、ご親族なのか“洋子ちゃんはもう入られました”などと話しをしておられた。そうか、ケロちゃんはもう先に来ているんだな。

私たちはファンクラブのパーティの方へ。白い服のガードに入っていた人たちがもう到着していた。廻り道をしていた私たちよりまっすぐに来た分早かったらしい。ドリーさんともまた会えたので、師匠たちのことを伝える。

クロークに荷物を預け、会場に入った。

時刻は大体21時前だったと思う。

      ☆

あー、やっぱり2回では終わらなかった(苦笑)。ついでに15000も自分で踏んでしまいました。
出勤前に歯医者へ。嫌だよー、行きたくないよー・・・っていえるうちはまだ痛みがマシってことですな。痛ければ「抜くなりなんなりしてくれ!」と歯医者に駆け込むはずだし。
先生は暗い顔。非常にまずい状態らしい。歯の中(つまり残っている根っこの部分)で割れているところから膿んで腫れている様子。麻酔をかけて切開し、膿みを出す。腫れの具合としては軽いものだそうなので、これで薬を飲んで様子をみるしかないようだ。何とか持ってくれ〜。

        ☆

宝塚とは全然関係ないけど、久々にマンガを買った。「カルバニア物語9巻」TONOさん作。この人は同人誌時代からのファンで、このためだけに南港に行ったりしていたこともあったが、プロになってからは行ってない。面白いんだよなぁ。同人誌でタニアちゃん(=主人公の一人)のドレスブックとかも出してるらしいけど、手を出すと大変そうなので自制している。
私が一連を貸してはめた友人は、「身辺雑布」(=ご本人のエッセイマンガの同人誌)を全巻ヤフオクでそろえたといっていた。絶句。何十巻とあるんだけど。
この人の代表作でよく売れているのは「カルバニア物語」だが、私にとっての宝物は「しましまえぶりでぃ」。猫マンガの傑作中の傑作。数人の猫好きに勧めて買わせ、ほとんどの人を号泣させた。もちろん私も普段滅多に泣かないくせに「しまえぶ」は読みながら号泣した。>緑野師匠、お読みになりました?

「カルバニア物語」は隔月刊の連載だから、コミックスになるまでに1年以上かかるのが難点。それでも6年ぶりに新刊が出た「ガラスの仮面」よりはマシか。つい最新刊を買ってしまったけど、話はほとんど進んでなかった。亜弓さん、失明してないし。コミックスになる段階で話が変わってしまったらしい。師匠に差し上げるということになっているのだけど、いつ会えるかなぁ?

マンガで今読みたいのは「NANA」矢沢あい、かな。買わねば、と思いつつ躊躇しているのが「OZ」樹なつみ、の再録コミックス。描き下ろしがあるとかないとか。これってもうすぐドラマシティでやるんだよね。ちょっと観たいかも。しかし男性ばっかりでやってるはず。宝塚と対極。どんなんだろう?以前出ていた宝塚ムック本の「宝塚ドリーミング」で、ケロちゃんがネイトにキャスティングされていた。なんかわかる気がする。もうちょっと熱いかな?とも思うけど。ムトーがとうこちゃんなら納得。黒髪で小柄だから。となると1024はゆうひちゃん?ネイトと心中しちゃうけどいいのかな?他は誰がいいだろーなー。フィリシアとか。

なんだか、オタクなわかる人だけわかるネタですみません。最後はやっぱりケロちゃんで締めてみましたが。
【続き】

スパニッシュの場面。ちかちゃんはまた可愛い花をつけていた。男役・汐美真帆が出てくる。ああ、なんて格好いいんだろう。素顔は普通の女性なのに、宝塚の舞台に立った途端、男役としてぱあっと輝く。これが最後なんて。貸切で聞ける掛け声が楽にもあった。ケロちゃんは「千秋楽」の「楽」だった。

わたるくんのソロがあって、いよいよケロちゃんが大階段の上にスタンバイしている。インタビューか何かで、階段を降りるとき、娘役さんたちが出迎えてくれるのが嬉しいといっていた。タカラジェンヌになった限りは皆が出迎えてくれる中を一人階段降りするというのは夢なのだろう。それがかなってよかった。

降りてくる黒エンビの胸には、コサージュも何もなかった。大劇場のときもなくて、忘れていたのかと思っていたけど、違うようだ。スポットが当たる。これまでで一番大きな拍手。私も常にオペラを上げていたのだけど、ここだけはダメだと思いオペラを置いて手が痛くなるまで拍手した。
そうだ、ここで大階段の真ん中に立てることが、コサージュなのだ。退団者として何より大きな花束をもらっているのだ。

オギーのショーで退団するということが決まったとき。友人たちと心配していたことがある。オギーは普通の階段降りを作らないのだ。背負う羽根もあまり好きではないと聞いたことがある。博多座でもセンター降りはタニちゃんからで、ケロちゃんは星原さんと一緒にサイドを降りていた。
「バビロン」でもそうだった。あれだけ退団者がいたのに(いたから、か?)センターであきちゃんが最初から歌い続け、ねったんやかよちゃん、そんちゃん、なるみんたちは歌なしで次々とサイドを降りた。拍手を入れにくかった。退団なのだから精一杯大きな拍手で迎えたかったのだが。オギーの美学、こだわりもこういうときはちょっとうらめしかった。
大劇場でどうなるのだろうと思って、初日、あまり期待せず、息を詰めて見ていたら、最初に真ん中をケロちゃんが降りてきてくれた。ソロもあった。嬉しかった。まるでエトワールのような目立つ演出じゃないか。オギーありがとう。感謝してもしきれないと思った。

真ん中を堂々と降りてくる存在そのものが、退団者・汐美真帆ヘのオギーの餞だったのだろう。だからコサージュはなくてもいいのだ。

“ありがとうございました”と礼をしながら客席へ。また大きな拍手。いったん袖消えてからまたとうこちゃんの横へ。幸せそうにわたるくんを迎え、銀橋へ。この時もにこにこしていた。銀端から帰るとき、大劇場では組子たちの顔をひとりひとりしっかり見ていたのだけど、今回はずっと客席の方を見ていた。

私は最後の最後までケロちゃんだけを見ていたけど、幕があっという間に下りてしまった。

組長さんが出てきて、楽のご挨拶と今後の予定。星組にも来年があるんだ、と遠い世界のような気持ちで聞いていた。退団者からの手紙の代読。
ちかちゃんのはムラでは聞いていなかったから、どんなことを言うのだろうと聞いていた。数学をしなくて済むと喜んだエピソードには笑いが。

ケロちゃんはムラとは変えてきていた。在団中に亡くしたお父さま、お兄さまのこと。最近亡くなられたおばあさま、おじさまのこと。さらにこの公演中にはおじさまを亡くされていたそうだ。記事などで時々お身内のことが語られていたことはあったけど、本人の口(代読だけど)から語られるのは初めてで、胸に迫った。これだけ近しい人を次々と亡くしても、舞台に立っている以上は駆けつけることもできなかったろう。それだけの価値が舞台にあるのか?と身内を大切にする人であればあるほど悩んだこともあったのではないだろうか。厳しい世界にずっと彼女はいたのだ。

みっこちゃんはムラとほとんど同じだった。

幕が上がり、退団者が降りてくる。まずはちかちゃん。ムラではケロちゃんからだったので、いきなり感があったがちかちゃんがいてくれてちょっと一息つけた。ちかちゃんの挨拶は男前だった。宝塚では娘役さんの方が実は男っぽいと聞いたこともある。キュートなんだけど格好よかった。

そしてケロちゃん。組長に名前を呼ばれると、ムラ同様「はーーーーーい」と高い長い声で返事が。ムラの時より余裕があったようで、ゆっくり会場全体に目を配りながら降りてきた。ああ、やっぱり男役メイクと袴姿が似合わない。お花は可愛らしい感じではなく、胡蝶蘭で作られたシンプルな真っ白い花束。幕が開い
たとき、檀ちゃんとえんでぃさんが持っている花を見て、ほっとしたケロファンも多かったはずだ。単なる胡蝶蘭ではなくて、花芯のところ辺りがキラキラ光っていたから、ジルコニアか何かを埋め込んであったのだろう。実は凝った作りのようだった。
ムラの時のようなタメもなく、落ち着いて語り始めた。それはまさにディナーショーや公演など、彼女が大切にしてきたセリフをつないだものだった。「我が人生幕が開く」。「血と砂」のセリフだった。公演セリフの中ではこれだけ。
「血と砂」ファンとしては背中がぞくっとするほど嬉しかった。だけどよく考えてみれば、汐美ファン以外にはわからない挨拶かもしれない。それでもいいと、ファンがわかってくれれればいいと、ファンに気持ちを届けたいと思ってくれたのだろうか。そこまで思ってくれたのだろうか。行ってきます、未来へ行ってきますと締めくくった。まだまだ「前進あるのみ」なんだな。

みっこちゃん。もうひとつの夢ってなんだろうな。

「サヨナラ宝塚」はムラと同じ。退団者の意向で歌は決められるという話だったけど、相談して決めたのかな?とうこちゃんと手をつなぐ。ニコニコしているケロちゃん。とうこちゃんは左手にディアボロのアクセサリーをつけているのだけどそれがキラキラ光っていた。とうこちゃんから先に泣き出して、ケロちゃんの頬にも涙が伝っていた。でもどちらもムラほどボロボロにはなってなかったようだった。

2度ほど幕が上がった。わたるくんと退団者だけが舞台に残っていたとき、わたるくんがあの男前な姿で優しくお姉さんのように語り掛ける。言い残したことはないの?と。3人ともうなずく。ケロちゃんもとても満足そうにしっかりとうなずいた。みっこちゃんが「星組が大好きです」とだけ付け加えると、ガッツポーズをしていた。

最後の幕が降りたあと、会場の拍手が静かに終息し、皆が席を立ち始めた。特にスタンディングということもなく、落ち着いて終わりを迎えられた。

時計は見ていなかったけど、19時頃だったと思う。

      ☆

やっとここまで来ました。ぜいぜい。私は8日のトークショーに行く予定はないけれど、なんとかそれまでに24時間シリーズ書き終えたいと思っています。あとはパーティと夜の語り、かな?あと2回位で終わるはずです(いや、終わらんかも)。自分のためにも書き残しておかないと、ね。
トークショーは行けるものなら行ってます。関西なら徹夜してましたね。しかし2週間前にも上京したばかりで、もう無理です。これが本当に最後とは思いたくないささやかな抵抗なのかもしれません。
   
17時頃。

お芝居が終わり、ロビーに出る。途中、泣きはらした友人がいた。「お芝居で泣いちゃったの?」びっくり(ごめん)。お芝居そのものでないたわけではなくて、汐美さんの最後だから、ということで泣いていたらしいが。

皆一斉にトイレに行っていた。終演後はガードに入りそのままフェアウエルパーティの会場まで誘導される。トイレに行っている余裕はないはず。私もトイレに行く。白い服を着た友人たちがいっぱい。特に今回は会から「白い服で」という指示はなかったが、自主的に全身白という人が多い様子だった。

実はこの幕間、何をしていたか何を話したかあまり覚えていない。それだけもう気持ちが最後の「ドルチェ・ヴィータ」に向かっていたのだろう。ショーの開演時間が何時からだったか?ちょっと押すことがある、みたいな話をしたことは覚えている。出待ちにそなえてもこもこに着込んでいたから、暑くて喉が渇いていたことも覚えている。

(この幕間だけではないけど、師匠と私を知っている人が私に「師匠、○○で見掛けましたよ」と何人も教えてくれました(笑)。師匠、すっかり有名人なようです)

皆がパラパラと客席に戻っていく。

17時30分頃。

早めに客席が埋まっていく。やはりちょっと開演が押しているようだ。アナウンスをじっと待っている間、客席は静かな緊張感に包まれ、誰もが息を飲んでステージを見つめていた。

開演アナウンス。

今度こそ最後の汐美さんの舞台。

リアルト橋を降りるわたるくんは、今回もちゃんとケロちゃんの手を握って行ってくれた。アルレッキーノのイヤリング、私は初めてみるタイプだった。いつもどおり、百花さんをしっかりエスコートして踊る。
ストップモーション、とうこちゃんがしっかりケロちゃんの手を握って去っていった。
花市場。しいちゃんと仲良しの水兵さん。歌い出すとものすごい拍手。花売り娘からのプレゼントはなし。街の女に誘われて右袖に消えるとき、しいちゃんの肩を叩いてうながす。
かのちかちゃんが花で衣装を飾って登場。手首にも花を巻いている。船乗りから白いバラを一輪。嬉しそうに花かごに刺そうとしていた。退場の時にその花だけもって帰ろうとしたのに、残念なことにセリの下に落ちてしまった。後で誰か回収してくれただろうか。

サテリコン。檀ちゃんからみっこちゃんに花とキスと囁きのプレゼント。「愛してる、ずっと愛してる」だったかな。
コーザノストラ登場。踊る場面からなんだかにこにこしている。いいのか、コーザノストラが。うめちゃんになんて囁いていたのだろう。やっぱり「ありがとう」かなぁ?
楽でも操られるダンスの時の男役の色気はすさまじかった。なんて美しいのだろう。なんて身体がよく動くのだろう。なんて切ない表情をするのだろう。ドルチェ・ヴィータの抱き締めは前楽同様やっぱり甘えるような身体寄せ、だった。

船上の場面。わたるセレブから白いバラを一輪もらった。大劇の時は喜びの余り倒れていたけど、今回は小さく投げキスだけ。喜んでいるのは喜んでいたけど。
どうしてこう薄くなっちゃったんだろうと考えてみるけど、邪推だが「やりすぎ」に対して組全体が釘を刺されたんじゃないかなぁ?ショーの構成そのものが「やりすぎ」だから注意されてもそれはしょうがないかとも思うが。

もらったバラを胸のポケットに刺して出てくる航海士。踊る間に何度も落ちそうになってハラハラ。最後は手に持って袖に引っ込んでいった。ちかちゃんはこの場面でも衣装にお花を飾っていた。アリデヴェルチで登場するときも大拍手。
みっこちゃんとお揃いの白いコサージュをつけていた。前楽ではここで泣きそうになっていたが、大丈夫そう。みなみちゃんの方が泣きそうな感じだった。終わったあとの船上からの拍手もなし、だった。

銀橋に出る。会場あちこちに視線を向けるケロちゃん。お母様、お兄様、その他大切な人がたくさん来ておられることだろう。まんべんなく見てくれるケロちゃんに感謝。
雷が鳴り、しゃがみこんだケロちゃんをわたるくんが抱き上げてくれてびっくり。嬉しかった。いつかやってくれるかな、と思ったけどとうとう最後で。わたるくんだって本当は細い人なのに。抱いたまま少しだけ銀橋を歩き、袖に駆け込む。きっと駆け込んだ後、ケロちゃんも含めて皆でわたるくんの衣装をむしりとっていただろう。すぐに海神にならないといけないのだから、本当は抱き上げ
ている時間なんてないはずだもの。

碧の洞窟。なぜその海神はスーツを着ているのだろう。普通の演出家なら、海神という人でない存在には、衣装で色をつけたくなるものではないだろうか。海神だけではない、海神の影たちもまた微妙に色の違うスーツ姿なのだ。
宝塚の過去の衣装リストをくれば、普通の人が海神に着せるだろう衣装はごまんとみつかるはずだ。ましてや体格のいいわたるくん。何を着せても着こなしてしまいそうという誘惑だってあるはずだ。

オギーは観客の想像力を信じているのだと思う。だから海神がなんの変哲もないスーツを着て現れる。少しアクセサリーをつけているだけ。だがそれは人ではない。海神なのだとわかる。少なくとも私にはわかった。「ドルチェ・ヴィータ」という作品にほれ込んで通った人たちももちろんわかっただろう。
海神は過去人であったもののなれの果てかもしれないとも想像できる。その海神と少女がつかのま恋に落ちる。異質な同士の恋。「触れ合えばわかるだろう、望むもの同じはずだと」。でも見た目やこころは同じでもその存在は同じではない。海神は少女を元いた世界に戻してやる。
度量の広さ、愛の大きさ。わたるくんの海神だからこそ何の衣装も要らない。その存在だけで伝えることのできる人だと思う。それを見抜き、演出するオギーもまたすごい。

フィナーレが始まる。始まってしまう。

リアルト橋の下のケロちゃん。ニコニコ笑っている。前楽の時とは心情が違うようだ。橋の上に立つとうこちゃんに真っすぐ手を伸ばす。わかるけど、わかるけど、あなたはこれから恋人と引き離され、ディアボロに連れて行かれるというのに。
恋人のちかちゃん。真っ白の衣装の胸のところを赤いお花で縁取っていた。とっても可愛い。どの場面でも退団者らしい飾りつけをしていた。女の子だもんね、ムラの楽ではできなかったものね。思い切りやりたいだけやらせてあげたいと思った。

「未練はないけれども」と歌うケロちゃん。清清しいけど、本人未練ないかもしれないけど(私はそうは思ってないけど)、私は未練ありまくり。楽でもやっぱりALL OKにならなかった。

ディアボロの手を取るケロちゃん。ちょっとためらいつつ、でも心の中ではためらってなんかいない。しっかりと握り締める。
銀橋に出る頃にはもうもっとニコニコ。踊りの最後で「とうこ!」と掛け声。これはやりたかったんだろうなぁ。そしてとうこちゃんとしっかり抱き合う。大きな拍手。とうこちゃんはもうボロボロだった。笑顔で下手袖に消えるケロちゃん。

【続く】
お芝居が始まった。さすが「長安」、ご贔屓の楽だというのに眠気がひたひたと襲ってくる。あれだけ寝まくった報いというか条件反射というか。

幽閉シーンから回想に戻って最初のシーン、母娘のお芝居が大劇場の時とちょっと変わっているようだ。ヒステリックな高笑いが抑えられたようだ。先代皇帝が娘の名前を呼ぶようになっていたし。

ケロちゃんが上手から出てくる。赤い武将の姿で剣を持った振り。美しい。立ち姿は足の先まで男役だ。メイクは少し優しげになっているような気がした。マイクもケロちゃんの声をよく拾ってくれるので、コーラスの中からもよく聞こえてくる。

ケロちゃんが出ていない舞台をぼけーっと観ていると、やっぱりヘンなセリフが気になってくる。玄宗「なかなか美しい」ってさぁ、これから息子の嫁を奪おうっていうんだから、「なかなか」じゃなくて「目も覚めるほど」美しいとかそういうことじゃないのか?油断させるために「なかなか」と言っているのか?

3姉妹。なんだか仙道さんの声がおかしい。歌になってマイクが入っていないことに気がついた。マイクトラブルかしら?
私は観ていないけど「ガイズ」の東宝楽の時、ケロちゃんのマイクが入らず、地声でがなり続け、声をつぶしてしまったことがあった。その数日後に沖縄の自衛隊イベントでメインで歌わねばならなかったのに、ケロちゃんはがなり続けたのだ。
仙道さんは声は出るほうだと思うのだけど、全くといっていいほどA席の後ろには聞こえてこなかった。楽ってこういうトラブルがつきものなのだろうか。もしかして、今日、この公演でケロちゃんのマイクが入らなかったらどうしよう、などという不安に駆られた。

祝いの席。楊貴妃として初めて参内する割りには、檀ちゃんには既に貫禄がある。ケロちゃんが安禄山を見る鋭い目つきは健在。扇を翻しながらとうこちゃんと踊るちかちゃんの可愛らしさ。もうこれで見納め。

幕前でのお芝居。ケロちゃん、声の抑揚もやや押さえ気味?大劇場ではもっと派手にやっていたように思うけど。幕が開いて、まとぶんととうこちゃんの言い争い。まとぶんは逆に東宝に来てからより熱くなったような気がする。二人を諌める陳玄礼将軍。皇帝陛下が大好き、とこの辺りから顔に書いてある。

ここからまた眠い場面。うとうと。いかん、いかん、せめて楽くらいまともに見ようと思っていたのだが。檀ちゃんの髪飾りや衣装を見て集中する。あれだけごてごて飾ってもまだ負けない檀ちゃんの美しさ。

さて、大劇の楽ではアドリブが満載で客席巻き込んで大爆笑だったシーン。安禄山が籠を抱えて出てくる。「しゃべる鳥でございます」の辺りから何が起こるか予想がついた客席はくすくす笑い。大劇場ではそのまましゃべっていたとうこちゃん、今回はマントで口元を隠し「センシュウラクバンザイ」。大劇場ほど後を引く笑いにはならなかったけど、楽しかった。
ケロちゃんたちは、不老不死の薬の味見を先に済ませてしまったらしい。しかも美味しいらしい。そのままの美しい姿で不老不死なら私も大賛成だ。
みっこちゃん宰相は今回は「思うは李林哺のことのみ」と読み上げ、目が悪くなったのかと返されていた。
お芝居で何かできるのはここだけ。あれは自分たちで考えるらしい。掛け合いの練習までするんだろうか。

そしてまたながーいねむーい場面。本当に寝ちゃうのか!?ご贔屓の楽に!?自分!?とツッコミ入れていたが、どうも時々意識を飛ばしていたらしい。「愛のソナタ」でもあんまり寝た記憶がないんだがなぁ。

3姉妹の歌でやっと目が覚める。今度は仙道さんの歌もちゃんと聞こえた。貢物オヤジーズは、えんでぃさん、紫蘭さんが甲高い声で、最後のみきちぐは低い声でオチをつけていた。
楊貴妃はライチを届けたちかちゃんに「いつもありがとう」とセリフを増やしていた。

とうこちゃん、頬の傷は耳の後ろに仕込んだ赤い塗料(?)でつけているそうだが、よく見ると確かに襲う前に耳の後ろに指をやっていた。私が見ていた回で、失敗はなかった。オウムを殺す場面でも、刺した後、何かの細工で籠の中にオウムを落としているはず、と見ていたがとうとうわからずじまいだった。

陳玄礼将軍やすずみんが(役名出てこないんだもん)「安禄山に謀反の疑いが」と言っているのに、楊貴妃におぼれまくる玄宗。ケロちゃん、片膝ついて控えたまま幕が閉まっていくのだけど、ここの表情がねぇ。視線はひたすらわたるくんの方を追っている。

前楽の時から気になっていたのだけど、有力者に謀反の恐れありという一大事なのに、いちゃいちゃしている君主をどうやったらそんなほほえましい、暖かい目で見守れるというのだろう。
皇帝はしょうがない。色香に溺れちゃってるんだから。でも側近のアナタがそんな「いいご夫婦だ、うむうむ」みたいな顔してたら、国も滅びるってば。ここは「何言ってんだ、この皇帝。謀反だぞ、謀反!!」って諌めなくてどーするの!?この表情は「陳玄礼が玄宗と楊貴妃」を見守る以上に「ケロが大好きなわたるさんと檀ちゃん」を見ているように思えた。このトップコンビの下で辞めれてよ
かった、もうこの場所から二人を見守ることはできないけど、きっと二人なら仲良く次の公演も引っ張っていってくれるだろう、そんな風に穏やかな気持ちが表情からもあふれていた。
また素になってるよと、とほほ、だったけどもういいかとも思えた。最後なんだもん。好きにやらせてあげて欲しいと。国が滅びようがどっちでもいい。ケロちゃんさえ納得いけば楽はもういいじゃないか、話がどうなろうと。

戦乱の場面。陳玄礼いや汐美真帆は叫ぶ叫ぶ。「陛下!」「陛下!」「安禄山!」。好きなだけ言わせてあげて。大好きな人たちを残していくのだから。

「お前たちにも責任がある」。師匠がおっしゃるとおり、いたく傷つく陳玄礼。楽でもそれ相応に傷ついていた。引き離す場面も、大劇ほど力は入ってなかったが、踏ん切りをつけるように左右へ二人を分けていた。
玄宗がすずみんを突き飛ばさんばかりにする。押しとどめたすずみんをなだめる陳玄礼。最後のセリフは大劇と同じ「皇帝陛下」だった。そしてその姿がゆっくりと左袖に消えた。
14時頃。

食事をどうしようかと友人と話す。15時過ぎにはここに戻って来なければならない。でも食べておかねば次にいつ食べられるかわからないし。友人は帝国ホテルに宿を取っているという。「よく取れたね」というと退団発表があってすぐに予約したそうだ。

そういえば、私もまみさんの時に帝国ホテルに泊まったな、と思い出した。今回はいつ来られなくなるかわからないので一人で別のホテルのシングルルームを取っていた。ドリーさんから有り難くもお誘いをいただいたので、ホテルはキャンセルしたが。

私ももし息子を連れてこなければならないような事態になったら、帝国ホテルに宿を取り、ベビールームに預けようかとまで考えていた。でもこの年末にギリギリに予約なんてできるのだろうかと思っていたが、案外空いているものらしい。部屋数が相当数あるからだろう。

会からチケットを受け取る友人もいるので、3時前には戻ってこなければならない。何人かの友人たちと合流しコンビニで食料を調達して、帝国ホテルの友人の部屋にお邪魔する。ロビーを歩いていると、白い服を着た人たちが何人も走っている。会のスタッフさんたちもいたようだ。退団者のファンが帝国ホテルに宿を取るのは、ふさわしい気がした。こんな時でないと、こんな時だからこそ、東宝の目の前の豪奢なホテルに泊まるという意味があるんだな、と思った。

部屋に着いてみるとあまり時間がない。慌てて買ったものを食べる。MDをセットし、預けていた楽のチケットを友人から受け取る。自分では落ち着いているつもりだったが、かなり気分がとっちらかっていたらしい。せっかく出待ちの間のエネルギー補給にと思って買ったチョコレートを、昼食のゴミと一緒に間違えて捨ててしまった。

食べ終えた友人たちと帝国ホテルを急いでホテルを出る。会にチケットを頼んでいた友人たちはほとんどOKが出ていたから、きっと行列になっているだろうと踏んでいたが、早めにチケット出しが始まったようで、少し待っていたら受け取れたようだった。
普段は扉の中はトップ会の机なのだが、千秋楽は退団者の机が中に入れてもらえていた。
いろいろと配慮してもらえているのだな、と実感する。ありがとう。

15時すぎ。

少し早めだけど、急く気持ちを押さえられなくて、劇場に入る。トイレにも行っておきたいし、席も確かめたいし。

友人が当ててくれた席は1階A席の下手サブセンター。大劇場とは違って、列ごとに段差があって前の人の頭が被ることもなく見やすい席だった。

その前のS席には、白い集団がいっぱい。どうも東京の会所属の人たちらしい。見知った顔が通路を通るので、席を立ってロビーに出る。皆、無事に会場に入れたらしい。話題に出るのは、他の会や劇場、劇団の配慮のこと。皆、顔がホッとしていて、ありがたいと口々に言っていた。
窓の外、東宝前を見るが、人が集まっている雰囲気は特になく、いつもの東宝前の風景だった。サバキ待ちの人はあまりいないのだろうか。
あっという間に時間が過ぎる。席に戻る。開演予定時間になった。

わたるくんのアナウンス。

15時30分。

汐美さんの最後の舞台が始まった。

       ☆

なかなか実際の日付けに追い付かない(苦笑)。これを書いているのは1月4日。日付け飛ばしてもいいのだけど、まぁ、一連の流れで書いているところだから、ちょっと遡って書くことにします。

歯は年末に差し歯の支柱を立て直して、差し歯を入れようというところまで来て、仮歯を入れていました。接着剤で付けているだけだから、粘着性のあるものや固いものを食べないようにと言われてました。年末年始に殺生な。でも取れてしまうと誰も直せないので、恐る恐る食事していました。
仮歯は取れなくて良かったのだけど、なんと根元というか歯茎が腫れてきてしまいました。おそらく根っこのところで膿んでいるのでしょう。明日、早々に歯医者に行かなくては。もしかして抜歯という事態になるのではないかと怯えています。だって、抜歯したら次は入れ歯ですよ、入れ歯。差し歯とも言いますが要は入れ歯。ブリッジかけるわけです。まだ30代でそれはないでしょう!?何とか抜歯は避けたいですが、どうなるやら。こういうとき、セカンドオピニオンって効くのかなぁ。今かかっている歯医者は別に腕は悪くないとは思うのだけど。

若い頃にちゃんと歯磨きしなかったから、です。歯の質も悪くて姉妹みんな歯がボロボロ。だから息子は泣こうがわめこうが押さえつけて歯磨きしています。乳歯の虫歯は永久歯にも影響あるそうですし。
私にとってはお茶会以来のショー。プロローグからやっぱり大好き。わたるくんがリアルト橋を降りていく途中、ケロちゃんが差し出した手に軽く触れて行くのが復活していて嬉しかった。

緑色のアルレッキーノ。どこにいてもすぐわかる。

仙道さんのソロ。おとぎ話の登場人物たちの中に紛れていた悪魔の手先が、ぱっと正体を現し歌い出すという雰囲気で好き。仙道さんの目つきというかメイクにも緊張感があるし。

百花さんとペアで踊るところ、二人が右足を振り上げる角度やタイミングが全く同じでいつも見ていた。ケロちゃんは娘役さんのサポートが本当に上手だと思う。
向かい合って抱き合いながら踊るところ、ケロちゃんが背中に手を(あの大きな)這わせながらぎゅっと抱きしめていたし、百花さんもしっかり抱きしめていた。

コロンビーヌちゃんたちは髪型もアクセサリーもいろいろ凝って工夫しているのは知っているのだけど、他の子たちをじっくり見る余裕がなくて残念だった。

花市場。ケロちゃんが登場し、歌い出すとものすごく大きな拍手。ああ、やっぱり退団するんだな。嬉しいのに哀しい。花市場でも相手役の娘役さんとしっかり抱き合っていた。
上手の三人娘。みなみちゃんが可愛い理由のひとつは黒目が大きいからじゃないかな、と思う。

楽ではしにくいから、この11時公演でしっかり名残を惜しんでおこうという感じなのだろうか。

サテリコン。背広の背中がなんとなく汚れているような。公演中転げ回った跡なんだろうな。
サテュロス・すずみんが背中合わせになるところで、すずみんがケロちゃんの手を握っていた!おい〜っ!すずみんまでかいっ!?
操られ、客席に背中を向けてたたずむところ、「これが男役の色気だ!」というのを見せつけんばかりの静かな迫力が感じられた。

これだけ色気を振りまいていたら、ドルチェ・ヴィータにを抱き寄せる時、どんな風になるんだろうと心臓がドキドキと音を立てる。コーザノストラを振り返ったドルチェ・ヴィータの顔を見てはっとした。あの甘い毒に満ちた存在のはずの彼女の顔から慈愛が感じられたからだ。まるで聖母のような優しい微笑みだった。そのドルチェ・ヴィータに近付き、恐る恐るそっと身体を寄せ、甘えるかのように頭をこつんとつけるコーザノストラ。何かを囁いていたらきっとそれは「ありがとう」だったのだと思う。

それにしても、トップがトップ娘役に操られ、転がされ(文字どおり)ても様になり酔えるっていうのは、わたる&檀ならではだな、としみじみ思う。わたるくんの度量の広さとある種のストイックさ、檀ちゃんの美しいだけじゃない芯の強さ、強いて言えば黒さが噛み合ってこその場面だ。オサ&ふーだとお芝居くさいし(オサファンから暴動が起きそう)、さえこ&あさこだと力技っぽいし(あさこちゃん一応娘役ってことで)、コム&まーだとなんかあり得なさそうだし、タカ&花はまたあり方が違う感じがする。檀ちゃんは「BMB」の赤い花でもいろんな人を手玉に取っていたけど、まみさんには直接手をくだしてなかったなぁ。りかちゃんに命じてやらせてた。強い意志のある娘役だと思う。

船乗りを虜にし、一緒に沈む前のドルチェ・ヴィータの笑みがまたもう秀逸。船乗りには見えない位置で、ニッと笑う。唇の端を上げるだけなのだけど、それだけで船乗りがどういう立場に置かれてしまったのかがわかるのだもの。あの広い劇場どこから見てもドルチェ・ヴィータの表情が見える。ジェンヌさんの、ことに檀ちゃんの表情の作り方というのはすごい。

船上のシーンも穏やかに流れて行った。セレブからコートや帽子を受け取る場面も割とあっさり。ちょっと胸を叩かれていたっけ?下手でのえんでぃさんとのからみも毎回変わっていたなぁ。
黒燕尾の二人が現れるとまた大きな拍手。なんだかこの辺りからケロちゃんの瞳がうるんでいたように感じられた。踊り終わり、みなみちゃんを後ろからしっかり抱きしめる。額を寄せる。みなみちゃんも頭を寄せていた。
銀橋からはける時はどうだったっけ?檀ちゃん、わたるくん3人で手をつないでいたような気がする。

碧の洞窟。ここも好きな場面だった。ケロちゃんが出てないから(笑)ひとりひとりをゆっくり見られたもの。最初はれおん&ことことを見ていたのだけど、他のカップルもそれぞれ味があってよかった。この場面に出られて下級生たちもさぞ嬉しく、楽しかったことだろう。オギーは生徒を使うのが本当に上手いと思う。

フィナーレ。橋の下のケロちゃんの様子は2階席からは見えない。前にお茶会近辺で見た時は、必ず下から橋の上にいるとうこちゃんを見ていたけど。
「水のインフェルノ」の歌。泣きそうな表情。ディアボロにちかちゃんと引き離される時の表情が痛々しい。でもやっぱりとうこちゃんの方へ引き寄せられてしまうんだな。銀橋から帰る前、とうこちゃんに投げキス、していなかったっけ?(すみません、さすがにもう記憶あやふや・・・)
この辺りでももうずっとケロちゃんの目がうるんでいた。ちょっとつつけばわっと泣き出してしまいそうな雰囲気。こんなのだったら、楽はどうなるんだろう。

スパニッシュの場面。やはりここでも「男役の色気」が満ち満ちていた。ポーズを決める度に視線も決める。ケロちゃんは宝塚を、タカラジェンヌを卒業するというよりも、何より男役を卒業するという意識が強いようだ。だからか「男役・汐美真帆」の姿をファンに見せていってくれるのだな、と強く強く感じた。
左袖に引き上げる前に、前は2階席センターに向けてウインクを飛ばしていてくれた。11時公演でもしっかり飛ばしてくれた。

パレードではとうとう泣いていたように思う。頬に涙の跡が一筋あったように見えたのは私の気のせい?

幕が降りる。いよいよ、あと1回で終わるのだ。
11時半頃。

新幹線は無事、定刻通りに東京駅に滑り込んだ。品川辺りで席を立ち、ドア前のデッキにスタンバイ。ドアが開くと同時にダッシュ。ここで急いだって、「長安」ちょっと余分に観られるだけなのにと思いつつ、それでも走る。
東宝のよいところは地の利の良さ。うまくいけば東京駅に着いて15分後には劇場の前にいることができる。日比谷のビル街は思っていたほどは寒くなく、劇場前はいつもと変わらない雰囲気。まだ片づけきられてないクリスマスの飾り付けが、世の中は昨日までクリスマスだったのだ、と思い出させた。

私はいつ来れなくなるかわからないので、最後の今日の2枚のチケットは友人に預けていた。11時公演のチケットをカウンターで引き取り、2階席へ。席に着くと舞台はちょうど、不老長寿の場面だった。慌てて汐美さんにオペラを合わせる。やっぱりとてもキレイだった。

それからが長いシーン。走ってきたせいか眠くならなかった(笑)。せっかくの2階席なので、オペラであちこち、奥の下級生チェック。え?清明節のお祭りのシーン、清十郎さまが出ていたんですか?あの顎は間違いない。玄宗の兵士が安禄山の兵士に寝返る間に、お祭りもちゃんと行ってたのか。
でもやっぱり退屈なので、あれこれ余計なことを考えてしまう。このお芝居の冒頭のシーンは、玄宗と高力士が薄暗い場所で語り合うところ。私は原作を読まずにこの作品を見ていたのだけど、楽前にちょっと知りたいことがあって検索していたら、玄宗の晩年は幽閉されていたらしいとわかった。

あれはその幽閉の場面なんだな。玄宗のその後、陳玄礼はどうしていたのだろう。史実はさておき、あの「一番玄宗を愛している」という将軍は、どうしたかなぁ、などと考えた。

楊貴妃を差し出したことで生きながらえた玄宗。そうすることしかできなかったとはいえ、悔やみ続けたろうな。酔うと側に控えている陳玄礼に当たり散らしたろう。「お前があそこで止めなければ、私は貴妃を行かせたりしなかった!」とか。責任転嫁するしかわずかでも救われる瞬間がないから。陳玄礼は黙って下を向いて、投げ付けられる言葉や盃を受けていたろう。
それでも玄宗の仕え続け、病気で先に死んだろうな、身体の不調を押して仕えているうちに起き上がれなくなって・・・てな感じ。それでも玄宗と共にいることを当然として、生きて死んでいったんじゃないかなぁ、などとケロちゃん演じる陳玄礼のその後は想像させてくれた。

近くに座っていた方が、子供さんを膝に乗せて観劇していた。どうしても観たかったんだろうな。気持ちはとってもよくわかる。小声であやしながら、観ておられた。特に不快ということはなかった。芝居の最後の方、少し盛り上がってきたかな?という辺りで少し泣きぐずり。「いつ終わるの?」とお母さんに聞いていたような。
わかるよ!!君、よく頑張ってるよ!さぞ退屈だろうなぁ。ごめんよ。ショーではもうちょっと楽しいと思うよ!?

最後の場面。私はお茶会以来の上京なのだけど、その後も観劇していた友人たちから「少し大劇の熱さが戻ってきたみたい」とは聞いていた。

確かにお茶会の頃のあっさりからは、少し戻っていたが、セリフをためることはなく、玄宗と楊貴妃を引き離した。

玄宗を押しとどめた後、「皇帝陛下っ」というセリフがまた復活していた。ケロちゃんとしては、本当はもっと熱くやりたいんじゃないなかぁ、と思った。回りのお芝居が変わったり、いろいろご意見もあったそうで、自分だけがやりたいようにやれないんじゃないかな。大劇の最後が好きだった者としてはちょっと寂しいけど、ケロちゃんとしては精一杯やっているように思う。

楊貴妃の昇天のシーン。いつもは手に持っている蓮の花がない。???変わったのかな?それとも忘れてるのかな?でも檀ちゃんは隙なくポーズを決め、幕が降りた。

幕間にチケット預けの手間をかけた友人に礼を言い、トイレの列に並ぶ。劇場内はもう見知った顔ばかり。余分が出た楽のチケットを譲る友人を見つけ渡したり、「誰々さん来てる?どこの席?」などと会話をかわしたり、挨拶したり。

ふとみると窓際に「緑野師匠と仲間たち(笑)」が。ドリーさんは全身白。会服もちゃんと着ておられてびっくり。この日のためだけに一式揃えられたそうだ。指の爪のネイルアートがとってもキレイ。体調がイマイチ(そりゃそうです。毎週バスで東西往復していれば)とおっしゃっていた師匠もお元気そう。「これから帰ってまた児玉っちなんですよね」とか言うと、「児玉っちじゃなくてオサさん!」と突っ込まれたり。まだ皆、余裕。

さらに友人を捜して1階席の方に。もう間もなく開演、というところで、捜していた友人に会えた。抱き合って、ちょっと泣いた。来てくれてありがとう。あなたもケロちゃんに会いたかったろうけど、ケロちゃんもあなたに会いたかったと思うよ。

午後1時。

ショーが始まる。最後から2回目のショー。

     ☆

すみません、ぶつぶつ更新して。なかなか時間が取れなくて書きたいのに書けない(泣)。早く書かないと記憶も薄れるっちゅうのに。まだあと12時間分以上あるよ〜。

紅白はマツケンサンバだけ見て、あと、寝てました。。うーん。気が付くと日付けというか年も変わってしまった。こんなこと初めて。いつもはちゃんと年の変わる瞬間は起きていて、船の汽笛の音とか聞いているのに(海に近いので鐘より汽笛の方がよく聞こえるのです)。不覚。

     ☆

ケロしいで検索が来ないのは、表記の問題はないでしょうか?立樹遥さんて「しぃ」ちゃんなんですか?「しい」ちゃんなんでしょうか?>サトリさん、kineさん。

私もいくらいちゃつかれても、微笑ましいな、と思うくらいなんで検索かけようという気にならない気持ちはわかります(笑)。なんていうか、しぃちゃんて、「まんま」な人なんで「それでいいじゃないか」と思ってしまうんです。とうこちゃんやゆうひちゃんなら「それからどうなったの?」と想像したくなるけど。
私は幸せだった。

濃い、濃い時間を過ごした。あの9月2日から12月26日まで。毎日毎日、息子の体調を気にしながら、追いつめられたような気持ちで駆け抜けた日々だった。その濃密な日々の最後の24時間はさらに、濃い時間だった。

こんな日を、こんな日々を迎えることは本当は幸せなんかじゃない。ご贔屓さんが在団し続けていてくれる方が、その10倍も100倍も1000倍も幸せなことは間違いない。でも、退団という動かしようのない現実の前では、幸せのてっぺんだったと言える。

二度と味わいたくない、でも大切にしたい24時間だった。

     ☆

2004年12月26日(日)

朝、6時。

携帯のアラームで目を覚ます。息子を預かってもらうため、前日から実家に帰ってきていた。私が起きると、息子は必ず目を覚ましてしまうので、起床するのは6時が限界。メイクと着替えを済ませ、軽く朝食。案の定、息子がとことこ起き出してきた。

6時30分。

暖めておいた車に乗り込む。エンジンの回転が上がるまで少し待つ。その間に会の伝言ダイヤルにかける。汐美さんは最後の入りの時間を自分の声で吹き込んでくれるはずだった。博多座の時も、最終お稽古日もそうだった。今回もきっとそう。一度真夜中に息子がうなされた時に聞いて、その時に聞けたのだけどもう一度、声を聞きたかった。が、何度かけても話し中。きっと私のように早起きして、リダイヤルし続けている人が多いのだろう。諦めて車を出す。当然周囲は真っ暗。

7時30分頃。

無事、自宅に到着。道路は空いていてスムーズに走れた。走っているうちに空が明るくなった。とてもいいお天気。良かった。
用意しておいた服に着替え、荷物を持って出る。一瞬、パソコンを立ち上げて日記を書こうかと思ったが、一刻も早く行った方がいいと思い直して自宅を出た。あまり寒さを感じなかった。

9時頃。

こちらもスムーズに電車を乗り継げて、新大阪に到着。5分後に出るのぞみに飛び乗ることにして、パンとコーヒーを買い込む。これなら11時公演のお芝居もかなり観られそう。最初はお芝居は全く捨てる気でいたのだが。

9時30分頃(新幹線車中)。

自由席も空いていてのんびり。パンとコーヒーの朝食を済ませ、携帯で友人たちにメールする。「無事新幹線、乗りました」「入りはいかがでしたか?」次々と返事が帰ってくる。良かったね、と言ってもらえる。「皆、大丈夫!あとはアナタだけ!」「待ってるよ」とも。有り難いことだ。
新幹線の中で少しでも寝ておこうと思ったが、全く眠れない。やはり気持ちが高揚しているのだろう。

途中、関ヶ原辺りで雨。真冬はこの辺りで雪が降る。新幹線は減速することもあって、到着時刻が遅れることもある。関西から上京する時に、一番天候が気になるのがこの辺り。雨なら大丈夫。

ある友人からメールが入る。「入りの汐美さんです」。携帯の画像が届いた。汐美さんの最後の入りの姿。全身白。白いベールまでかぶっている。顔はとても清々しい、というより、私には満足そう、充実しているように見えた。
友人にメールする。「ベールをかぶってるってことは、もしかして婚約者でも出てくるのでしょうか!?」冷静な友人から「みっこちゃんもおそろいでした」。なあんだ。ムラの時もきんさんと同期がいろいろ作ってくれたものを身に付けていたし、今回もそうなんだろう。ベールは作りやすいだろうし。

入りは行きたかった。とても。でも諸般の事情により諦めざるを得なかった。でも、こうやって、行けなくても、まだ自分が新幹線の中だというのに見たかった入の姿を観ることができる。文明の利器の存在と、そして友人たちの存在。それがなければこんな風に思うこともできなかっただろう。

携帯は宝塚ファンをやる上ではもう不可欠なシロモノだろう。入りや出の時間を知り、余ったチケットのやりとりをし、たとえ日本全国どこにいても一瞬で人事情報が手に入れられるのだ。

そして友人たちとのつながりも、この手のひらに収まるキカイが保っていてくれる。汐美さんが退団した後、この中の住所禄や送信・受信簿のリストはどう変わっていくのだろう。

汐美さんの退団でもうひとつ悲しいのは、汐美さんファンであることで知り合った友人たちとの別れだ。別れるつもりはなくても、遠方の友人たちとはもう会う機会もなくなるだろう。

汐美さんのファンというのは、「30代の働く女」というのがなぜか多かった。ま、私も子持ちだが一応その範疇に入るし。だから世代が同じなので、話していても境遇や話題が同じでとても付き合いやすかった。汐美さんの魅力にひっかかるのはその世代が多いということか。なぜだろう。もちろんそれ以外の年齢層の方もいらっしゃったけど。「血と砂」の時に感じたが、ゆうひちゃんファンは汐美ファンより10歳程度平均年齢が低いように感じた。

ドリーさんが「人間15年もたてば、男の好みは変わります」とおっしゃっていたのだが、30代というのは汐美さんの魅力がわかる年代なのではないだろうか。しかも働くということで世間の中で生きている女性が魅力を感じるタイプ。逆に老若男女(!?)幅広い層から支持される人ではなかったかもしれない。嫌われはしないが「イカれる」ということにはならなかったのだ。

同志ともいうべき友人たちからのメールを受けながら、新幹線は順調に走っていた。やはり一睡もできなかった。

気合い切れ

2004年12月28日 宝塚
とうとう全部終わってしまった。そう思ったせいか、身体に力が入らない。帰りの新幹線で中途半端に寝たせいか、乾燥で喉をやられてしまい、咳も止まらない。寒気もする。まず〜い。明日からまた1週間、「元気な」息子と二人きりなのに。

忘年会もパスし、会社を出る。明日からまた自由が全くなくなるので、少しでも買い物でもしておこうかと街をぶらぶらしていたら、なんだかすごく悲しくなった。意味もなく、地下街をすれ違う人の顔を見ながら同じ場所を行ったり来たりした。

今頃、汐美さんは何をしているのだろう。まぁ、退団後のいろいろなご挨拶回りや後片付けだろうけど、そろそろ関西にも帰ってきているかもしれない。

関西だから問題。こうやって普通に歩いていても、向こうから歩いて来るかもしれないのだもの。そうしたら、見つけたら、本当に声を掛けていいんですか?「汐美さん!」って。

最後の姿まで見届けて、決して後悔しているわけではない。あれきり二度と会えなくても、それはしょうがないかな、と思えるところまで納得できている。まみさんの経験があるから、これから自分がどんな風になっていくかも想像が付く。ビデオで観られるだけでも満足する人間なので(人によっては、退団後、全くビデオを観られないという人もいるようだが)この美しい人には自分が会いたい時にはいつでも会えると思うし。

でもやっぱり、寂しいなぁ、と思ってしまうのだ。

泣かなかったくせに。人には「今日の千秋楽、泣くようなことありましたっけ?」とか言うくせに。自分では気付かないところで心に穴でも開いてるなぁ。

公演でもパーティでも全く泣かなかった私だが、劇場のロビーであやうく涙がこぼれそうになった。それはある友人の姿をみつけられたから。その人が千秋楽・パーティに来るか来ないかは私は知らなかった。怖くて聞けなかった。でも、来てくれた。嬉しかった。良かった!と心から思った。その人がどれだけケロちゃんのことを好きか、それは知っていたから。その人に見届けてて欲しかったのだ。ケロちゃんの姿を。

その他にも、この人だけには見届けて欲しいと思った人たちは、皆無事に来ることができていた。よかった。

公演が東宝に入ってからの私の時間の感覚は、他の方とはちょっと違っていたかもしれない。特にこの楽前数日は毎日、心臓をバクバクさせていた。

もちろん、息子の体調のことで。午前中に元気だった子供でも午後には高い熱を出すことがある。半日で体調が変わるのが幼児なのだ。1週間前なら、発熱してもまだ治す時間的余裕はある。でも、2日前、1日前になるとどうしようもない。だから私が千秋楽を観られると確信できたのが、当日の朝、新幹線に乗った時だった。ここまで来たら引き返せない、と。

普通の人は、公演期間が少しでもゆっくり過ぎて欲しいと思うもののはずなのに、私は退団のタイムリミットがどんどん近付いて来るのに、逆に、このまま、息子の体調のいい状態の間に、早く千秋楽が来て欲しいと願ってしまった。なんて矛盾なんだろう。

だから今、全て終わってしまったら、何ももう管理しなくていいのだ、と気が抜けてしまった。

多分、楽のこととかパーティのことを読みにきて下さってる方が多いと思うのですが、ちょっとずつ、書けるところから書いていきます。すみません。

帰ってきました

2004年12月27日 宝塚
無事、千秋楽のために上京し、観劇、フェアウエルパーティまで参加できました。

書きたいことはいろいろあるのだけど、何せ、夕べは完徹。そのまま関西へ帰ってきて、預けていた息子のピックアップなどいろいろやっていて、眠くてたまりません。明日は朝早起きして息子のお弁当作らねばならないし。とほほ。

今回は、ムラの楽のように溢れ出てくる思いを書きつらねたいと言う気持ちはなくて、不思議と落ち着いています。ですからゆっくり書きたいと思っています。

観られてよかった。上京できてよかった。最後の私のケロさんの記憶は、少し涙目の握手、でした。

その後乾杯の後の徹夜での語り。雪組時代のビデオを観ながら、サトリさん、kineさん、ドリーさん、師匠と騒ぎ、「血と砂」を観ながらドリーさん、師匠とあの当時の幸せな記憶を振り返り。幸せな幸せな24時間でした。

自宅に帰るとケロちゃんからの挨拶状も届いていました。ケロちゃんはやっぱり退団してしまったんですね。

これだけは。

今回、千秋楽を観たいと思った会所属のケロファンは、皆、無事に観られたようです。私は友人が当ててくれた友会席で観たのですが、その前辺りの席にぎっしりと白い会服の会員さんたちがいました。

本当に幸せな空間でした。

私は詳しい事情はわかりませんが、トップ会はもちろん、その他の会の皆さん、劇団・劇場、そしてケロ会の代表、スタッフさん、皆さんの暖かい気持ちがケロちゃんを見送る人たちの気持ちを劇場まで連れて行ってくれたのでしょう。ありがとうございました。心から御礼申し上げたいと思います。

芸術祭優秀賞

2004年12月24日 宝塚
今さらだが、「ドルチェ・ヴィータ」が文化庁の芸術祭優秀賞を受賞したそうだ。

その第一報を聞いた時思ったのは、「文化庁、あれでいいんでしょうか?」だった。痛いのは充分自覚しているが、大劇場版(東宝版も)の「ドルチェ・ヴィータ」、某退団者のための仕様がかーなーりー組み込まれている。

はっきり言って、普通のショーとはちょっと違うのだ。

もし、ケロちゃんが退団しなければ、あのような作品にはならなかった。もっと違うエンディングが用意されていたことだろう。足出しロケットもあったかもしれない。

私は退団者のファンだから、もちろんあれでいい。でも、宝塚のショーとしてあれが普通だとは言えない。なのにそのショーが評価されたというのは、ショーを作り替える原因となった者のファンとしてはなんだか複雑なのだ。自意識過剰だろうか。

芸術祭にエントリー(?)できるのは、ある時期に上演されていることが条件だから、オギーはこの作品が評価対象になるということは重々承知だったろう。それでも、あのように作り替えてしまった。ためらいはなかったろうか。変えることで賞を逃すかもしれないということは思わなかったろうか。

文化庁の評価担当者は、あのショーをどう観たのだろう。退団者仕様になっていることは気がついただろうか。

多分気がつかなかったのではないか、と思う。ああいうものだ、とごく普通に思ったのではないか。それでも評価できる、と考えたと思いたい。

ま、実際は、ああいう賞って出来レースとはいわないが、下準備というか根回しが重要な気がするが。

退団者ファンが観れば、感涙ものの(サヨナラ)ショーに。

普通の宝塚ファンが観れば、オギー色の強い幻想的なショーに。

文化庁の人が観れば、(一応)芸術性のあるショーに。

観る側がどんな立場に立っていても、それぞれに「観たいように」見えるという不思議なショーだと思う。なんとも多面的な不思議なショーだ。オギーはそれを計算してやっていない。なんとなく、作ってしまっているのだ。

改めて、すごい作家だなぁ、と思うと同時に、この時期に、このメンバーで、この作品に巡り会えたことを、感謝したい。この作品であることが、汐美さんに退団を決意させたのだとしたら、それも巡り合わせなのだろう。

受賞で文句があるとしたら、作品タイトルですな。お願いだからサブタイトルまで入れて欲しい。「ロマンチカ」だなんて、誰も思っちゃいないよー。

     ☆

緑野師匠、お風邪、大丈夫ですか?それなのに夜バスで。お芝居でしっかり睡眠とって、体調整えてくださいね。いやいや・・・。

私は何もしていませんが、師匠にお願いしたいのはこれからもこの日記を書き続けてくださることですわ!それが何より読者が喜ぶことだと思います。これからもよろしくお願いいたします。
わーい、私も23日21時にドリーさんちの3333番ゲットしました!何かください(笑)。相殺?

        ☆

「天の鼓」ってそんな抱腹絶倒な話だったんですか。「聖なるナントカ」の方がマシ?私、「サラン・愛」で初めてヅカ観て涙が出たんですが(笑い転げて)あれとどっちがヘンな話ですか?緑野師匠の解説が上手すぎるのかしら。

        ☆

録画したままにしていた「カフェブレイク」のしぃちゃんの回を2倍速で(ごめん)見る。ショーの映像になると通常速度に戻してみていたら、サテリコンのところ、ケロちゃんが檀ちゃんに絡む場面の上手で、ディアボロがしぃちゃんの肩を叩いて押し出し、ドルチェちゃんの方にけしかけているじゃないですか!?

ぜーんぜん知らんかった。一体私はこのショー、何回生で観ているんだろう。そりゃあ、師匠やドリーさんには全然かなわないんだけど。それでも結構観ているはずなのに。

いや、そりゃ見る余裕はないなぁ。だって、ケロファンとしてここでケロちゃんのこと観ていなければ、一体どこを見るというのだ?

「花舞う長安/ドルチェ・ヴィータ」のDVDも買ったので、ドルチェ・ヴィータを見たのだけど、プロローグ、ディアボロのとうこちゃんがわたるくんに狙いを付けてるってちゃんとわかるような振り付けになってるじゃないですか。

ぜーんぜん知らんかった。だって、ここでも緑色のアルレッキーノひとりだけを見てるんだもん!おかげでどの場面でどこにいるか、もうオペラアップでも全然迷わずターゲットオンできるわ。

「ドルチェ・ヴィータ」をそういう見方(=ご贔屓さんだけを追っかけ回す)しかしてないというのはすごくもったいない見方だとは分かっていても、限りある時間、限りある観劇回数でどこを見るといわれたら、迷わずケロちゃんだもの。

損していることがわかっていても、もうどうしようもないですな。

博多座のボーナストラックも見たが、こんなに人数少なかったけ?と今さらびっくり。すずみんのアップよりもタニちゃんのロケットが見たかったよー。

      ☆

退団まであと3日というのに、緊張感のない私。何でだろう?開き直っちゃったかな?

緑野師匠が書いておられるように、東宝が淡々としているというのは、関西から上京しているケロファンの友人からも聞いていた。あのムラの舞踊会からお茶会、千秋楽、DSまでの狂乱の時を思えば、今は本人も落ち着いているのだろう。今、何を思っているのだろう。

後悔だけはして欲しくない。

誰だったか忘れたけどあるOGさんが、自分の現役時代の映像を見ながら「恰好いい。私、なぜ辞めちゃったんだろう」と呟いたと聞いた時、それを一番思った。

その時は辞める理由もあったろう。自分も納得していたろう。清々しい退団の時を迎えたろう。それでも尚、辞めずにいれば、宝塚の舞台を続けていけただろうに、と思う日がある人がいたのだと、切なくなった。

ケロちゃんにはそういう思いをして欲しくは、ない。それには、退団後、自分で納得いくように、生きていってもらえるよう祈るしかない。インタビューなどで自分がいつも言っているように、在団中の自分に恥じないよう生きていく、と。

だから私はお手紙でも、握手の時でも、かける言葉は決めている。

「幸せでいてください」

幸せは意志だ。能動的で前向きな。自分で選び、動かなければ「幸せ」ではいられない。

ケロちゃんだけには、幸せでいて欲しい。難しく厳しいことを言っているかもしれないけど。

ムラのお茶会の時、そう声をかけた私にケロちゃんは言ってくれた。

「はい」と。

それを信じようと思う。

      ☆

師匠、ありがとうございます(感涙)。お気にかけてくださって嬉しいです。乾杯、しましょうね。いろんなことに。

今って、年末?

2004年12月21日 宝塚
もしかして、今年ってあと10日しかないんですか?今日の今日まで全然気がついてませんでした。

もしかして、年賀状もおせち料理も用意しないといけなかったんですか?大掃除の予定とか、帰省の計画とかも立てないといけなかったんですか?

全くやってません。

大掃除はやる気なし。息子がいるのに出来るわけない(って去年もそういってやらなかった気がする。一昨年は妊娠中でこれまたやらなかったような気が)。

26日まであと何日、ってそれ「だけ」を気にして生きていたから、今が年末だなんて、忘れ去ってましたよ。もうこのまま忘れていよう。放棄します。

放棄といえば中日。私はこの日記には自分の予定は書かないようにしているのだけど、これは書きます。私は中日は観に行きません。決して。観に行くほどの強さはありません。これが地元で、ケロちゃん退団後2〜3年たってからだったら行ったかもしれないけど、こんなにすぐには絶対行けません。辛いです。まとぶんがウバルドだということはあまり関係なくて、誰がやろうと辛いものは辛い。

チェーザレをまみさんがやったように、業平をたーたんがやったように、こういうことはよくあること、と頭でわかっていても、やっぱり行けない。

ケロちゃんがもしかして観に行くかな?と思うとそれだけでも辛いような気さえします。

     ☆

愛称の敬称問題(笑)ですが、神経質にならなくて大丈夫だと思いますわ>kineさん。
私がまさに、ご贔屓退団後、下級生のファンになった人間ですけど、特に変えてませんわ。理事様すら「イシちゃん」扱い。会とかでディープに活動する場合は気を配った方がいいでしょうし、もしかするとこういうサイトでも読んでいて気になるなぁ、と思っておられる方がいらっしゃるかもしれないですが。
何を基準に敬称を考えればいいか、という回答の一つですね。
お茶会のケロちゃんのトークで、過去の出演作品を振り返る、というのがあった。新公で銀橋で歌うのが楽しくてしょうがなくて怖いもの知らずだった話、組替えで月組に行ってビデオで予習して行った話、駆け足で話は進む。本気で優勝するつもりだったらしい運動会の話の次に、舞踊会の話になった。

ここでも強調。

名取を取って「たまたま」舞踊会に出ることになって、ゆうひくんも「たまたま」舞踊会に出ることになって、「たまたま」二人で同じ演目で一緒に踊ることになって、と。

そんなに強調しなくても。

言われてるんだろうなぁ。「一緒に出ることにしたんでしょ?」って。普通そう思うもん!月組時代、常に二個一で行動していて、明らかに仲良しだって認識されていたもの。

ゆうひくんも自分のお茶会で「舞踊会に出ると決まったとき、バウの話はまだで、こんなに忙しくなるとは思ってなかった」と言っていたらしい。

うーん。そこで「退団するから一緒に出ることにしました」とは絶対言えないわな。いつ退団を決めたかのシナリオが崩れてしまうもの。まぁ、そこまで意地悪く考えなくてもいいか。本当にたまたまだったのかもしれないし。

「一緒に合わせてお稽古できた回数がとても少なかったが、最後に舞踊会で踊った時が一番よかった」とか「一緒に出られて縁を感じた」とも言っていた。ファンも嬉しかったよ。ケロちゃんが月組時代、ゆうひくんと幸せそうにしていたイロイロなことを思い出した。「血と砂」だけじゃない。東宝柿落とし、まみさんのさよならショー、着物ショー、ガイズ、その前夜祭、全国ツアー。ずっと一緒にいたから。月組時代のケロちゃんの横にはいつもゆうひくんの姿が浮かぶ。

その後「血と砂」の話になって、ビデオを見たことがなかったがDSで歌うことになって初めて見たというところからDSに話が流れていってしまった。「血と砂」好きとしては、もっと「血と砂」の話が聞きたかったのに!ケロちゃんにとって、このDSは本当に思い入れのあるものだったのだなぁ。

私はケロちゃんにとってゆうひくんは身内というか妹みたいなもんなんだろうな、と思っている。性格は全く違うけど、一緒にいるうちに頼りにし、頼りにされ、なんていうのか、特別扱いが当然というか。

私にも妹がいるのでそんな感じかな、と思うのだ。妹だからこそ姉は「引っ張らねば」という意識が強く働く。私が二人で地震に遭った時、妹がいるからこそ頑張れた、みたいなところがあった。

「血と砂」のとき、ケロちゃんは必死にゆうひくんを引っ張っていたように感じた。そんな必要はなくても、引っ張られる側はそうは願っていなくても、そういう存在があるから、頑張れるって事はあるはずだ。DSの時、2日とも遅くまでゆうひくんが残ってくれていたらしいと聞いて、やっぱりそういう特別な存在なんだな、と思ったりした。友達や仲間を越えてお互いにごく自然にそういう行動をする相手。

ネット上でアヤシイ関係と(笑)言われているのはもちろん知ってるけど、それは二人とも色気がある証拠だし。いいじゃないですか。仲が良い二人の話を聞くと私は嬉しい。ケロちゃんがひとりじゃないって思えるから。

        ☆

いずれにせよ、そういう縁のある存在が、しかも2人もケロちゃんにいてくれて、よかったと思うのだ。ケロちゃんが幸せなら、私は何も言うことはない。ケロちゃんを幸せにしてくれる人に深く感謝感謝、なのだ。多分退団後も、縁は切れないだろうし、在団中の思い出を深く語り合える仲間であり続けてくれるだろう。

ありがとう、ゆうひくん、とうこちゃん。これからもケロちゃんをよろしく。

       ☆

kineさんへのお返事。

やっぱりそうか。大変大変申し訳ないけど、この公演=ショーでは、ほとんどわたるくんを見ている余裕がないのです。でもふと「切ない表情をする他のジェンヌさんって誰かな?」と思ったとき、一番に浮かんだのがわたるくんだったのです。

あんまりそういう表情に縁のなさそうな人に見えるけど、あるんですね。思い違いでなくてよかった。

しっかり考えると、切ない表情といえば「螺旋のオルフェ」のイヴ、まみさんでしょう!にこりともしなかったもんな、あの作品。ビデオしか観てないけど素敵だった〜。私の大劇場作品No.1ですわ。師匠がおっしゃるに「あの作品は大失敗、壊れてる」そうなんですけど。そうなのかなぁ???でも長安見るより絶対寝ないと思いますわ。
ラインナップ発表ですか。ふーん。

ご贔屓がいないってことは、こんなに冷静に観察できるもんなんだ。そして思い入れがなくてどきどきわくわくしないもんなんだ。楽だけど、何だかつまらないね。しょうがないか(半ば投げやり)。

齋藤クンと藤井クンはどこ行ったんだろ?

       ☆

ここでの汐美真帆さんの表記、まちまちですね。「汐美さん」とか「ケロちゃん」とか。特に表記統一はしていなくて、その時の気分というか文脈に合わせてというか、ええ加減にやってます。私は「LUNA/BMB」からのヅカファンで、「ESP」辺りからの汐美ファンなので、「よーくん」という言い方は馴染みがありません。

宝塚ファンにはいろいろ掟があるらしくって、「ちゃん」付けなのか「くん」付けなのか「さん」付けなのか、要するに敬称にも決まりがあるらしいです。ご贔屓より下級生だと「くん」「ちゃん」が許されるけど、ご贔屓より上級生には「さん」だそうで。でも私が「わたるくん」とか「りかちゃん」とか言ってしまうのは、私がまず真琴つばささんのファンから入ってそのまま抜けてないせいで
しょうね。掟破りだなぁ。すみません。

         ☆

お茶会ではケロちゃんへ出席者全員からのプレゼント、というのが毎回ある。東京のことはよく知らないけど、ムラでは大抵洋服だった。洋服はジェンヌさんにとっては自己主張のための手段であり、たとえ珍妙な(byドリーさん)格好であってもそこには何がしか、着る側の想いが込められているはず・・・だ。

また洋服は消耗品。入り出で同じ服を見ることの方が少ない。まみさんだったかりかちゃんだったか忘れたけど、ジェンヌさんの家は、一部屋が丸々洋服部屋になっていることが多いとか言っていた。自宅のあるムラならいざしらず、東宝は寮かホテルかとにかく仮住まいから来てるはずなのに、あれだけ毎日とっかえひっかえ、どうやって持ってきているのだろう。宅急便で送るにしても、冬だとコートも何着もあるようだから、ダンボール何箱も送ってるのだろうか。帽子、サングラス、靴、鞄、ベルト、傘、アクセサリーもあるわけだし。不思議。お茶会やお食事会、入り出でプレゼントももらうだろう。帰るときはもっと大変そうだ。

今回の東宝のお茶会では、「ケロさんを癒す温泉ツアー」だった。ちょっと寂しかった。もうジェンヌジェンヌした自己主張の強い洋服は要らないものね。退団するときは、下級生に服を譲ったりするそうだが。

その次(だったかな?もう記憶があやふや。お茶会ビデオ買うつもりだったから、覚えることにエネルギー割いてないんですわ)に、出席者へのプレゼントもまた温泉がらみのものがあった。ケロちゃんが引き当てた出席者に、手ぬぐいにサインを入れてプレゼント、というものだった。そこにケロリン桶というのが出てきた。当たった出席者がそれもプレゼントと思って、持って帰ってしまいそうになって、司会者さんが「それは後ほどご返却ください」と念押ししていた。

あれ?ケロリン桶、しかもオペラで見たら中に黒エンビのケロちゃんが貼ってあるよ?確か、とうこちゃんもお茶会で温泉がプレゼントで、黒エンビケロちゃんの写真が貼ってあるケロリン桶が出てきたという話じゃなかったかな?

お揃いか使いまわしだな。スタッフさんというのは時々そういう茶目っ気のあることをされる。ケロちゃんはそれを知らなかったんじゃないかとは思うけど。

プレゼントは本人からのリクエストを受ける形が多いから、温泉ツアーはとうこちゃんとケロちゃん二人打ち合わせてのプレゼント希望だったかもしれない。ケロちゃんが実家にいる限り、とうこちゃんは決して遠いところにいるわけじゃないけど、一緒に旅行に行って、いろいろ語り合いたいこともあるのかな、と思った。

私は雪組時代を全く知らないから、とうこちゃんとケロちゃんの関係も実感としてよくわからない。「巌流」のフィナーレでにっこにこのケロちゃん位かな?あとアイーダに執着するウバルドとか。

ケロちゃんがとうこちゃんを好きなのはよくわかるんだけど、なぜ?っていうところがピンと来ないのだ。

でもきっと、音楽学校から雪組下級生時代、いろいろ、あったんだろうな。お互いに影響を受けた人と、腐らない縁をもつ人と言い合えるんだから。

【続く】

観劇時のお楽しみ

2004年12月18日 宝塚
先週末の観劇が、私の東宝初観劇だったわけだけど、11日の午後公演でショーを初めて、2階センター辺りで観た。

スパニッシュの最後、舞台から下手へとはける寸前で、ケロちゃんのウインクがまともに、来た。

きゃーきゃー。

隣で観ていた友人に終演後、「来たよね?来たよね?」と興奮ぎみに話をした。「誰か知り合いでもいたのかなぁ?」素直には喜べない私。

昼食を食べるためにお店に入り、週末ごとに上京している友人にそれを話すと「来たでしょ?」とこともなげに言われてしまった。「毎回2階センターに飛ばすんですよ」。

毎回?「大抵そうですね。でもじゃあって期待していると別のところに飛ばしたりしてね」ですって。なーんだ。でも恰好よかったからいいや。

大劇場をホームにしていると、たまーに東宝に行くとその狭さにうっとなる。感覚としてはドラマシティって感じ。座席への出入りも大変だし、足元に荷物を置く場所もない。何よりステージが狭い。よく考えるとショーのリアルト橋、袖に収納しきてれないような・・・だから、あの花市場とサテリコンの間のコロンビーヌ(百花さんかな?)とオレンジ帽の男の演出が入ったのかもしれない。

「王家」も一度だけ上京して観たけど、何だかスケール感がなくてもったいなかった。芝居の完成度としては東宝の方が上がっているのは間違いないから、どっちがいいとは言えないのだけど、スケール感が必要な作品(「王家」とか「エリザ」とか)は、ぜひ大劇場でも観ていただきたいと思う。あの空間の広がりは宝塚観劇にふさわしい。

劇場を取り巻く雰囲気も、駅を降りたその瞬間から座席に座るまでがすべて、歌劇を観るという非日常的な雰囲気に包まれているので、気分も盛り上がるし。

まぁ、武庫川のほとりと日比谷の一等地では、土地のお値段、ひいては自分が座っている座席分の価格が100倍位違うだろうな。

だから、東宝の座席、2階は1階にほぼ重なっているような感じで、2階からはまさに、ステージを見下ろす、という感じで高い高い。1階で観るのと全然違う。上から眺めているような気分になる。芝居やショーのエネルギーが足元を素通りしていくような気さえしていた。そこへいきなり不意打ちのようなウインク。よろめいてしまった。

毎回、あるようだから2階センターに座った時のお楽しみにしていてください。

ケロちゃんはそれでもよく2階を観てくれる人だと思うし。

      ☆

この前観劇していて、見逃せないな、と思ったポイントをいくつか。

サテリコン(花市場?どこからなのかな?境目がはっきりしないわ)で帽子を取りながら右袖に引き上げて行く時、髪の毛をくしゃっとしていた時があった。そして出て来たとき、髪の毛は七三というか八二になっていた。恰好いい!

その頭であやつられるように踊る時、髪を振り乱して踊っていて、恰好いいのなんのって!くしゃってやっていたのは髪が乱れやすいように固めていた髪を崩していたんじゃないかな?

       ☆

プロローグでアルレッキーノがストップモーションになり、ディアボロのとうこちゃんがちょっとだけケロちゃんを触っていく。私が観た時、触り方が毎回変わっていた。大抵腕とか手なんだけど、一回だけ胸の下辺りを軽く叩いて行った。なんとなく友情、って感じがした。腕や手を触るより親密な感じで。

       ☆

オープニング、わたるくんがリアルト橋から降りる途中で、ケロちゃんのアルレッキーノの差し出した手に触れて行っていたのに、東宝では全く触らなくなってしまった。ちぇっ。

       ☆

コーザノストラのケロちゃんがドルチェ・ヴィータに絡むところ、もちろん大劇からそうだったのだけど、檀ちゃんが握り合わせた手を伸ばして、一瞬ケロちゃんをホールド(ってんですか?檀ちゃんの方が芯になってポーズを一瞬決めるところです)するような振りがある。檀ちゃんおっとこ前!!
ひとりならまだしも、サテリコンでは檀ちゃん両手でわたるくんとまとぶんと二人一度にホールドするところもある。ホントおっとこ前!いいわぁ!檀ちゃん。

       ☆

ドルチェ・ヴィータを抱きしめる所、おそるおそるだったり、がばっと、だったり。いろいろバージョンがあるのは報告があちこちにあるので、お楽しみに。ドルチェちゃんも私が観た時、一度ケロちゃんの左頬を手で触っていっていた。楽にはどうなるのか。楽しみなんだけど、寂しい。

       ☆

ケロちゃんはこのショーでよく「切ない」という表情をする。哀しさに満ちた切なさ。「切ない」顔が出来る人って、実はあんまり多くないような気がする。わたるくんは時々やってるかな。とうこちゃんは顔よりも全身から切ないオーラが出せる人、でもその切なさは哀しみ方向じゃない。しぃちゃんは、うーん。

自分で鏡を見ながら切ないと思われるような顔をしてみたんだけど(やるなよ)「苦しい」とか「変な顔」にはなるんだけど、明らかに「切ない」という表情にはならない。

「切ない」表情を見つつ、さらにケロちゃんの存在そのものから切なさを感じてしまうのは、私がファンだからだけど。素のメイクではそういうことはもちろんなくて。あのメイクの腕も「切なさ」を表現するのに一役かってるんだな。伏し目がちな表情が美しく見えるあの宝塚男役メイク。だから、「切ない」顔を観られるのは、もうあとほんのわずか。ケロちゃんがそういう顔をできるショーを作ってくれたオギーに感謝したい。

      ☆

私の治療中の前歯、とうとう取れてしまった。差し歯だから簡単に取れるんだけどね。中を調べてもらうと、なんと根っこのところが割れていた!靭帯損傷と思われていたのが、実はひびが入っていた、ってところです。

「かなりの力でやられたんやなぁ」そうなんです。家庭内暴力がひどいんです。今日なんて、あやうく顔面、かかと落としを食らうところでした。

「またダメージ受けてもっとひびが大きくなったら抜歯もあり得るで」って、そうなるとブリッジかけて入れ歯ってことじゃないですか!?ひーん。今日は口への攻撃は避けたけけど、目はまた殴られました。涙ボロボロ。口元だけは死守しないと。

風邪もうつされたようで、喉が痛くてたまらないし。本当に子育ては戦いだ。
ええい、うるさい!やかましい!私は認めないからな!1月8日で「汐美真帆」を封印するなんざ!

・・・・などとわめいてみても、そりゃあ本人が決めることだからなぁ。落胆。

今回の上京で何がショックだったかって、はっきり本人の口からそれを言われてしまったこと。私CS、見てないから。嫌だよう。理屈じゃないんだよう。子供のダダこねと一緒でとにかく嫌なんだよう。

「バウ主演を汐美真帆さんに、と告げられた時、私って汐美真帆だっけ?と驚いてました」「私のどこまでが汐美真帆でどこまでが本名の私かわからない」「退団後は汐美真帆であったことに恥じない本名の私でいたい」etc.インタビューなどで語る内容に、ケロちゃんはよく“本名の私”を登場させる。それは他のジェンヌさんよりかなり多いのではないだろうか。

舞台に出る上で心がけていることは?との問いには「美しく出ること」といつも答える。これって「舞台上の私は美しい」ってことかいな、と意地悪く考えたりしたこともあったが(でも私は最高に美しいと思ってます!“美しく出る”は美しいとはちょっと違うニュアンスですね。隅々まで気を配れってことでしょう)、要するに「汐美真帆」を本名の自分から少し突き放して見ているんではないか、と思う。

私は造り込んだジェンヌさんが好き。真琴つばささんもだから好き。立ち居振る舞いから発言、メイクに至るまで自分の意志で「真琴つばさ」を造り上げていた。汐美さんもその傾向のある人だと思う。私個人の考えだが、真琴さんの側にいるようになってから、より造り込みに力が入ったような気がする(グラフで影響受けた、とも言っていたし)。

男役だから特にそれはあったろう。男性を観察し、自分と引き比べ、観客の望む男性像を自分の上に造っていく作業。個人によってやり方は違うだろうけど、汐美さんは「男役であること」を自分のテーマにしていたように思う。

今回退団を決めたことも、汐美真帆を1月8日で封印するといっていることも、彼女が理想とする男役像を、とりあえずは納得いくまで造り上げられたから。そしてそれを一番美しい形でとどめ、大切にしたいと思っているのではないだろうか。

写真は全てアルバムに入れて整理していると言っていた汐美さん(「歌劇」の対談で。他のシューマッハメンバー・大空、霧矢、大和がびっくりしていた)。退団後、本名の自分としてその姿をゆっくり見るのだろうか。

いくら退団後も汐美真帆でいて欲しい、いつまでも応援します、などとと、一ファンがダダをこねても、それは子供と同じ、新しい興味の対象が出てきたら、そちらへついっと流れてしまう。ファンとはそういう気まぐれで残酷なものということは、汐美さんが一番よく知っているだろう。

私だって、真琴さんでおしまいにしようと思っていたのに、こういうことになっているわけだし。

汐美さんが一番大切にしたいものが「タカラジェンヌ・男役・汐美真帆」で、それを汚さぬよう決して手を触れないというなら、それが幸せなら、私は諦める。汐美さんの幸せが私にとっては一番大切だから。

一方、本名のケロちゃんはお嬢様だから、そういうことはないとは思うけど、生きていくなかで、自分の全てを総動員して進んでいかねばならない時がある。そんな時、汐美真帆であったことを手段にしても、それも私は構わない。生きていくこと、は幸せでいることの根幹だから。

汐美さんがやりたいと思う全てを受け入れたいと思う。

・・・・などと言っておきながら、やっぱり時々、姿を現して欲しいんだ。本音は。楽を経て私がどう思うようになるかはわからないけど。

お茶会で「血と砂」のビデオは見たことがなかった。DSで歌うとなって初めて見たが「イケてる!面白い!」と言っていた。そんなん素晴らしいに決まってるじゃないですか!?私たちがあれほど夢中になったのだから。
(自分では恥ずかしくて見てないんだろうなぁ。確か「ガイズ」とかも見たことないと言っていたし。他の作品も最近のになるほど見てない気がする。最初ちらちらと映る頃は一所懸命見ていたビデオも、しっかり映るようになると却って見ないものじゃないかな?「絢爛」は見てないに違いない・笑)

ねぇ、汐美さん、美しいとかきれいとか、それはもちろんそうなんだけど、あなたのその存在そのものが魅力があるのだよ。フアン・ガルラードは美しく格好よかったけど、それ以上に弱く情けなく愛すべき魅力ある人物だったよ。それは美しいだけじゃない、本名のあなたそのものの魅力がにじみ出ていたと考える私は、深読みしすぎですか?

いくら造った「汐美真帆」でも、本名の自分と不可分なものが絶対ある。本名の部分から滲み出していったものが、「タカラジェンヌ・男役・汐美真帆」に複雑で繊細な彩りを形作っていたと思う。汐美真帆はあなた自身だ。紛れもなく。

だから、封印する、なんて頭で考えて口にしないで。後で自分の道を狭めるようなことを言わないで。自分自身を檻に閉じ込めないで。何でも先のことまできちんきちんと考えて考えて、気を配って気を配ってする汐美さん。きちんと決めたい気持ちはわかるし、ファンのために区切りをつけてあげたい気持ちもありがたい。でも、幸せになるためには何でもあり。自分を、汐美真帆を、本名の自分を大切にしていってください。

        ☆

そうなんだ、やっぱり透き通って行ってますか。ホントはね、透明になって欲しくなかったから、昨日の日記にああ書いたんだけど。その通りになっちゃってますか。

ねったんやゆうかちゃんみたいな清清しさとはちょっと違う気がするんです。空に溶けて無くなってしまいそうな落ち着きがね、やだ。
組替え発表。ふーん、どーでもいいわ、といいつつ、情報にかじりついていたり(苦笑)した。それぞれの組の組替え後のメンバーを思い浮かべたりしたけど、全てが遠い世界のような気がした。
多分、これから公演を観る時は、落ち着いて眺めるように舞台を観ることになるんだろうな。それはそれでちょっと寂しいけど、身をよじられるような苦しい思いはしなくて、済む。そして胸が痛くなるような恋焦がれる気持ちも。

そういう思いで私に宝塚の舞台を見せてくれた、真琴さんと汐美さんに深く感謝している。

      ☆

ムラのお茶会は、今までと会場が違っていた。とても狭い会場。なんで?最後なら来たいという人も多いだろう。普段は上の階のゲームで走り回れる位の広い会場を使っていたのに。

案の定、会場にはテーブルがぎっしり。後でサプライズイベントになったピアノまであってもう、ケロちゃんがテーブルの間を縫って歩くのも大変な位。グッズ売り場も押し合いへし合い。お茶会は終了時刻が大変押してしまい、私はぼろきれのようになっている緑野師匠を振り返る余裕もなく、終わった途端に走り出してしまった。詳しい事情はわからないけど、もしかしてこれだけ押すということ
を前提に、あの宴会場にしておいたのかもしれないな、と思った。

そしてその狭い会場だったから、空気がどんどん濃縮されて、その濃い空気に酔う人が続出していた。

東京のお茶会は、もっとさらっとした感じ。落ち着いていた。息もしやすかった。

ムラのお茶会は舞踊会の翌日。その前には運動会もあったし、大嵐の中の誕生日もあった。新公を境にDSのお稽古も始まりつつあった頃。署名活動は一息ついていたかな?東宝のチケット発売はその1週間前。DSのチケット発売日は済んでたけどポスター入手をどうするか画策していた頃。もう何がなんだかわからない頃だった。何より、退団発表してから私たちファンの前で素で心境を語る最初の機
会だったわけだ。

皆がテンパっていた。整理できてなくてぐちゃぐちゃだった。信じたくなかった。退団なんて。

お茶会が始まるなり、汐美さんが話し出したのは退団のこと。私にはまるで覚えたての退団理由のシナリオを、間違わないように、ボロが出ないうちに言ってしまおうとしているように思えた。

最初からそんなだから、緑野師匠、いきなり号泣。そのままのムードで空気が濃縮されたまま最後まで行ってしまった。話で泣かせて歌で泣かせて握手で泣かせて。

その頃の汐美さんご自身もまた、「退団します」「毎日退団を実感しています」とは言っていても、カラダの中で収まるべき所に収まるものが収まっていない感じがした。

東京のお茶会では、退団のお話は後から。公演の話とかこれまでの思い出を振り返るというお話から始まった。

退団の理由についても、自分で何度も何度も繰り返し言っているうちに、まるでそれしかないように、滑らかに口から出るようになっていた。ファンも「これが退団前の最後のお茶会なんだ」「だから楽しまなくては」「目に焼き付けなくては」と心構えが違っていた。

最後のお茶会にふさわしい、うつくしい会だった。握手はムラではひとりひとりがしっかり握手し、一言二言会話していたのが、人数が多く流れ作業のよう。あの人数ではね。会場には汐美さんのこれまでの出演作の代表的な場面がパネルにして展示されていたり。ケーキには「Maho Shiomi」のシュガープレートが乗せてあったり。グッズをたくさん買った人には抽選が用意されていたり。気配りに満ちたお茶会だった。
いつも楽しい当意即妙のトークで楽しませてくれる司会の方が、寂しげだったのが印象に残っている。

お茶会だけじゃない。11月8日以来1ヶ月ぶりに観た公演もまた、うつくしく、薄くなっていた。お芝居で熱く熱く玄宗を止め、楊貴妃と引き離していた陳玄礼将軍はあっさりと。わたるセレブに入れあげていた航海士はドアボーイのように。
公演中、運動会で大騒ぎしていた組のテンションもほどよく落ち着いていたのかもしれない。

温泉などに行くと宿のテーブルに置いてあったりするじゃない?10cm四方の透明なプラスチックケースに入っていて、ピースがすべてきちんとはまるよう、指で動かしていくパズル。
ムラの頃にはぐちゃぐちゃだったパズルが、ゆっくり、確実に日々が過ぎていくうちに、収まるべきところに収まっていく。大体2/3ほど出来上がったところか。静かに、確実に、すっすっとピースが動いていく。

日曜日の入りには朝から頑張って行っていた。汐美さんは白くうつくしく、薄かった。薄いというか、透明感に満ちていた。きっとこのままどんどん透明になっていってしまうんだろう。楽の日はどうなっているだろう。私はそれをこの目で見ることができるんだろうか。ま、息子の体調次第ですが。

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